2010年11月30日火曜日

有機チッ素と無機チッ素

先週末からイチゴの「花房=かぼう」に、またまたアブラムシだのコナジラミだのがフワフワとまとわりつきはじめたので、ハーピン・タンパクという「害虫忌避剤」を葉っぱに散布してみました。


ハーピン・タンパクってのは、農作物に発生した害虫が合成するタンパク質のことで、植物がこのタンパク質を感じると、免疫力を強くするディフェンス・スイッチをONにします。ついた虫を殺す効果はありません。
















なので、ホントは「害虫が発生するまえに定期的にスプレーすると、虫がついたと勘違いした植物が免疫を高めるので虫がつかなくなりますよ」というものなので、害虫が発生する前に定期的にスプレーしておくというのが、つかい方としては正解です。














ですが、タンパク質やアミノ酸なんかの「有機チッ素」は根っこから吸わせるよりも「葉面散布=ようめんさんぷ」したほうが植物はよく吸えて、それはハーピン・タンパクも同じで、ハーピンを吸えば植物にとって養分として使えます。植物からしたら有機窒素を吸った方が、のちのち自分でやらなきゃイケナイ手間がはぶけてラクなんですが、無機チッ素よりもでっかくて根っこからは吸いにくいので「しかたなく無機チッ素を吸ってる」感もあるそうです。
そして今回スプレーした「ハーピン・タンパク」資材には鉄なんかの「微量元素群」も入っていて、実はこっちの成分の方が本命だったりなんかします。


植物がいっちばんタクサン必要な肥料はチッ素なのに、植物には空気中に80%もある気体チッ素は固まりすぎてて吸えないので、土壌中の微生物や菌が「気体のチッ素」を「無機チッ素」にチェンジしてくれてはじめて、植物は肥料としてのチッ素をGETできるんです。
この微生物の働きのプロセスを「チッ素固定」っていいます。

「気体チッ素」を「無機チッ素」へと固定してくれるアリガターイ菌で有名なのは、マメ科の根っこにすみつく「根粒菌」です。なので肥料を減らしたい生産者さんは、クローバーやレンゲなどのマメ科植物を畑に植えてチッ素代を節約したり土をフカフカにキープしてりできてます。ただ、悲しいことに「根粒菌」は肥料過剰な土や農薬の散布で、いともカンタンにメキメキと減ってしまうので、「肥料の過剰施肥や農薬散布は、有用菌も減っちゃうから、ますます肥料と農薬がいるようになって悪循環のはじまりだよ」という説もでてくるわけです。


で、水耕やココなどの養液栽培では、硝酸態やアンモニア態の無機チッ素を水に溶かして根っこから吸わせてます。

ものすごく乱暴にいうと、植物は吸った「無機チッ素」に炭素だのアレコレとひっつけて、さまざまな「アミノ酸」や「タンパク質」の「有機チッ素」を合成してまして、これを「チッ素同化」というそうです。







植物の体内で同化された有機チッ素は、新しい葉っぱや根っこや花や実など植物のカラダのもとになったり、「オーキシン」「サイトカイニン」などの大事な大事な植物ホルモンにもなります。

なので植物が「チッ素の同化」をすればするほど早くゲンキに育つしたくさん花も咲いて実もおっきくオイシくなるので、ものすごぉ〜く大切なんですが、無機チッ素をグングンと同化するのにはイロイロと材料が必要なわけで、その材料とはズ・バ・リ!!
「リン・モリブデン・ホウ素・鉄・マンガン・亜鉛・銅・カルシウム・カリウム・塩素・酸素・水素・炭素などチッ素以外の必須元素ぜんぶ+最近ではケイ素・ナトリウム」ってぇことです。(ホントはもっと複雑な複雑なおハナシですが。)

ちなみにこの「必須元素」の「元素」は、あたまりえのことですが「ミネラル」とか「要素」とかに置きかえられたりもします。


植物はその材料をつかって・・・なかでも主に微量ミネラルたちで「酵素」をこしらえてます。ヒトでも植物でも微生物でも、み〜んな食べたものを消化するのに「酵素」が必須なことは有名だと思います。年末になるとよく流れるCM「食べすぎ・飲み過ぎ・胃もたれにはXX製薬の○○!」という胃腸薬も消化を助ける酵素をつかってます。

ハナシはもどって、ナゼいろんな種類の酵素が必要なの? は、ヒトツの酵素ができるお仕事はヒトツだけだからです。なのでチッ素を同化するには、アタマがいたくなる複雑で多くのプロセスがあるので、そのプロセスの数だけ「酵素の種類」が必要になります。

そんな理由から、チッ素をタップリ&マンゾクに吸わせられる水耕栽培で逆に足りなくなっちゃうのが、光合成でつくられる「炭水化物」、そして微量ミネラルでつくられた「酵素群」です。

なかでもリン酸・カルシウム・微量元素群は「培養液にあっても、すぐに固まって吸われにくかったり、吸われても根っこでジ〜ッと動かないヤツがいて、一番必要な新芽に届かない」なんてことも実はよく起きています。そうなると葉っぱでは「消化待ちの硝酸」がふえていっちゃって、葉ものや果実であれば硝酸チッ素が多くてニガマズくなったり、葉っぱがうすくなって害虫がよってきたりデメリットがボロボロでてきてしまうようです。


ということで、前置きが長くなりましたが「微量ミネラルがはいってるハーピン・タンパクを葉面散布すると免疫力がアップして、そのうえ葉っぱにたまった硝酸も同化されて虫もよらなくなるからメリットいろいろ」

・・・なんだそうです。








そしてそんなわけで水耕栽培用の「活力剤」には、水耕栽培で不足しやすい酵素や糖分そして有機酸に天然の植物ホルモンなどがはいっているわけです。



水耕栽培でつかえる「微量ミネラル資材」はチマタでイロイロでてますが、もし葉面散布して効かせたい時の注意点は、「直射日光に弱いし、鉄とかは酸化すると葉っぱが傷むから、スプレーするなら、日が照らない夕方か曇りの日にドーゾ」ということのようです。