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一般的に利用されている園芸用微生物の種類と効果
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植物と養分などのやりとりをしたり、免疫を強化して、互いにメリットをもたらす共生関係にある菌類、微生物、バクテリアを「園芸用微生物」とか「有用菌」とか「土着菌」とか、よびます。
キャナ・ジャパンのサイトでは、代表的な「園芸用微生物」として以下の3つが説明されています。
- 菌根菌 = 植物の根の内部や表面に共生し、根から糖分(炭素源)を受け取る代わりに、根が届かない土壌中に菌糸を広げて、リン酸や鉄、亜鉛などの固定化された栄養素を溶かして植物に供給します。特にリン酸の少ない環境でその効果が顕著です。
- トリコデルマ菌 = 糸状菌(カビ)の一種で、リン酸などの難溶性養分を有機酸によって可溶化する能力があり、さらに根腐れ菌などの病原菌に寄生したり、抗菌物質を分泌したりして病害を抑制します。
- 根粒菌 = マメ科植物の根と共生し、「根粒」と呼ばれるコブを形成します。その中でリゾビウム属などの細菌が空気中の窒素(N₂)をアンモニアに変えることで、植物がチッソ養分を得られるようになります。
日本の民間農法では、これらの植物の生育に有利な働きをする自然由来の有用微生物群を総称して『土着菌』と呼んでもいます。『土着菌』は、森林の落ち葉層や腐葉土に自然発生し、人の手を借りずとも有機物を分解し、生命の循環を支えています。
『土着菌』に含まれる微生物には、
・細菌 (枯草菌や乳酸菌など)
・放線菌 (ストレプトマイセスやアクチノプラネス)
・カビ(糸状菌、コウジカビ、ムコールなど)
・酵母
・光合成細菌
などがあり、その中から特に、植物へのメリットが大きな菌や繁殖力が強い菌が選ばれて、農業用資材(ボカシ肥・堆肥スターターなど)として活用されています。
かつて日本では、トイレが水洗になる以前、下肥(しもごえ)や落ち葉などを活用し、ボカシ肥を中心とした自然循環型の農法でさまざまな作物を育ててきました。なので「園芸用微生物の利用が最先端の農業だ!」とか「バイオスティミュラントが熱い!」とか言われても、「何をいまさら・・・」とポカンな部分もあります。
しかしながら、肥料や農薬の使用を抑え、環境への負荷を軽減しながら、栄養価が高くおいしい農作物を効率よく収穫するためには、園芸用微生物(有用菌資材)の活用は現代でも大きな意味があります。
その土地の風土でずっと栽培されてきた伝統野菜などの固定品種は、微生物と切っても切れない強力な共生関係を築いているので、肥料をたくさん入れなくも毎年きちんと育って収穫ができます。
しかし、肥料成分が十分に得られるハイドロポニック栽培環境で育つ植物は、これら有用菌類の働きがなくても早く大きく育ち、たくさん花を咲かせることができます。とくに、品種改良されたF1品種の野菜や花苗は、根域微生物との付き合いが下手だといわれます。
ココ培地やポッティング・ミックス培土など有機質の培地では、微生物が定着しやすいのですが、とはいえ1年以内で収穫を終わらせる短期収穫が大前提なので、微生物を定着させる意味が薄くなる実情があります。
そのため、ハイドロポニカリーな栽培での園芸微生物資材とは、微生物そのものを繁殖させる目的ではなく、植物ホルモン・アミノ酸・菌体残渣(菌の死骸)・抗菌成分など、微生物の代謝副産物(ポストバイオティクス)を活用する目的が中心です。ココ培地やポッティング・ミックス培土を問わず、すべての培地で、ピシウムなど根腐れ病が発生しやすくなるのは真夏だといわれますが、しかし実際には、病気が発生する前段階で水のやりすぎや培地の温度が高くなるなどが原因で、すでに根が酸素不足(酸欠)によって変色し始めているケースが非常に多いと言われています。
このため、微生物資材が手元になくても、季節に応じた栽培方法や環境のコントロール(温度・酸素供給・養液管理)を適切におこえば、多くの病害虫の発生は未然に防ぐことが可能です。