夏のハイドロポニック栽培の大敵、「 根が酸欠! 」を解決するハイドロポニック・システム栽培の具体的なマニュアルをご紹介していますが、本日は再循環式ハイドロ・システムのなかのドリップ・システムです。
例えば、再循環式ドリップ・システム「ジェミニ」は、システムを連結させたり、外部にリザーバータンクを設けたりしない「スタンド・アローン型」のシンプルなシステムです。 培養液を蓄えた下段のタンクの中に循環ポンプがセットしてあって、タイマーなどを使ってポンプを作動させて、定期的に培養液をくみあげて植物に培養液を与えて育てる、という、説明を読むよりも見た方がはるかにわかりやすい、なので、だれでもDIYでつくりやすくもある、ハイドロポニック・システムです。
再循環式ドリップ・システムの人気がとても高い理由は、構造がシンプルで、栽培効率がとてもよく、栽培難易度が高いパプリカだって、たぁっっっくさん収穫できます・・・しかもおいしく。
しかし、再循環式ドリップ・システムで、たくさんおいしく収穫するためには、マニュアルをきちんと理解しなければ、前々回ピックアップした、DWCシステム と大差のない結果となってしまいします。
まずは、このシステムの特徴とメリットから・・・
- すべてのハイドロポニック・システムのなかでは、ランニングコスト(肥料と水の使用量)は、中間くらい。
・ - 構造がシンプルなので、DIYでもカンタンにつくることができる。
・ - DWCやNFTなど、絶え間なくポンプが動いているシステムと比較して、栽培管理や培養液などのメンテナンスがカンタン。
・ - 管理と手入れは、週に1〜2回ほど。
・ - 収穫率が非常に高い。
再循環式ハイドロポニック・システムは、根に空気をたくさん保つことができるように、保水性が低くすき間がたくさんできる培地を使用します。つまり、大粒のクレイ・ペブルスがもっとも適しています。培養液をドリップする時間と回数は、ピーク時で4時間に一度、3分間ほどだけなので、根に酸素がとても豊富になります。
つまり、たいていは、根が常に培養液に浸っている状態ではないので、DWCシステムにくらべて培養液の減りや、pH、EC値が変化しにくい特徴もあります。また、夏バテや根ぐされ病にもかかりにくい栽培システムです。
ちなみに「 培地にロックウールを使うのがオランダ風 」という認識が世界的に定着していますが、ドリップ用パーツが豊富なオランダのハイドロポニック栽培のほとんどがドリップ・システムで、以前はコスト面の理由から、ほぼすべてのシステムでロックウール培地が使われてきました。
そして、大きなロックウール・スラブと高圧ポンプを使用して、培養液を再循環させないRun-to-Waste(掛け流し式)のドリップ・システムを使うのが商用施設栽培用で、
主に低圧のポンプを使用して、小さな再循環式ドリップ・システムを使うのが家庭用、てな感じで、オランダのドリップ・システムは使い分けられてましたが、今日では家庭用ドリップ・システムにはクレイ・ペブルスが定着していています。
・ドリップ・システムでロックウール培地を主に使うのは、掛け流し式ならOKですが、再循環式で使ってしまうと、保水力が高すぎるだけでなく培養液のpH値をあげるのでベリーベストではないね、という認識が一般的です。
次に、このシステムのメリットを最大に引き出すマニュアルです。
- 1m以上の丈に育つ野菜の栽培では、培養液は一株につき最低でも5ℓは必要で、一株につき10ℓ〜20ℓあるとGoodです。
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・ - 同じ培養液をくりかえし使用する再循環式システムなので、培地は、問答無用で、クレイ・ペブルスの大粒を使用します。 培地の使用量が多いほど、ドリップ回数を少なくすることができ、根の広い面積で空気を豊富に保つことができるので、このシステムのメリットが引き出されます。
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栽培開始から3〜4週間ごろは、苗のコンディションとグロワーのクセで、問題が起こりやすくなってくる時期です。クレイ・ペブルス培地の表面に肥料が白く結晶化しはじめたら、それは肥料を濃く与えすぎているサインです。 ドリップ部分が詰まりやすくなってもいるので、水か、CANNA Flashなどをシステム全体に回してクリーンにしたあとで、肥料濃度をうすめにして培養液の管理をしましょう。
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・ - このシステムで、もっとも大切なポイント、ドリップ回数とドリップ時間、つまり循環ポンプを動かす回数と時間ですが、ドリップする分数と回数を最低限にとどめることが、このシステムの最大のポイントです。
苗が小さな頃は昼間に1日一回、ほんの数分だけ(培地がすっかり湿る程度の分数)、苗が大きくなるにつれてドリップ回数を増やしていきますが、基本的には、昼間の時間帯(ランプ点灯時間帯)に、1日4回だけ3分間だけのドリップで十分です。
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・ - 下段のリザーバータンクに根が届くようになったら、リザーバータンクをエアレーションすることもあります。 エアレーションは培養液のpH値を上げるので、交換した翌日は、必ずpH値をチェックしてください。
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・ - 培養液は、7日〜14 日に一度、必ずすべて交換してください。交換する日以外でも、培養液の量がMax時から25%〜50%減ったら、Max時の量になるまで培養液を継ぎ足します。 真夏に水分だけ蒸発してEC値が上がってしまう時は、水だけを継ぎ足します。
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・ - スタンドアローンタイプのハイドロポニック・システムで頭が痛いのが、真冬の水温管理です。 真冬はサーモヒーターで培養液を温めることが有効ですが、スタントーアローンタイプは、ヒーターが根にダイレクトに触れて傷んでしまうことがあるので、爬虫類用の加温ヒートマットをシステムの下に敷くことがおすすめです。または、以前紹介した連結方法で、外部にリザーバータンク用バケツを設置して、そちらで加温したりpHやECをメンテナンスしたり、ということができます。
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冬に室温を温められない時は、夜間にも、ヒーターや加温マットなどであたためた培養液を1時間に一度数分だけドリップさせて、根と培地をあたためます。このままだと根が酸欠気味になってしまうので、夜明け(ランプ点灯時)から4時間くらい、ドリップを止めて根に酸素を吸収させる工夫が必要です。
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ここまで説明したように、再循環式ドリップ・システムは、4時間に一度、3分間しかポンプを動かさないので、ポンプの作動熱で培養液の水温があがってしまう、ということは起きませんが、真夏に太陽光やランプの熱での水温上昇をふせぐために、リザーバー部分にファンで風をあてるか、リザーバータンクを外部に連結させて日陰や室外に設置する、という方法が有効的です。
また、ここまでの説明を、並々ならぬ忍耐で読み進んでくだすった方なら、お気づきだと思いますが、再循環式ドリップ・システムのキモとなるパーツは「 循環ポンプ(水中ポンプ) 」の大きさです。 吐出量が大きな循環ポンプを使うと、次のようなメリットがあります。
- 培養液が、ブシュ〜ッとすごい勢いでドリップされるので、さらにドリップ時間を短縮できるし(1分)、酸素量も増える。
・ - 水圧が高いので、再循環式ドリップ・システムで大きな課題となるドリッパーの目詰まりが起こりにくくなる。
吐出量が1000ℓ/h(1時間に1000ℓの水を吐き出せる)以上の大きなポンプは、吐出口が15mm以上のホースにしか対応していないものがほとんどなので、ドリップホースに内径13mmホースを使ってる場合は、あらかじめレデューサーが付属しているポンプを選ぶと、困りません。 また、大きなポンプは周波数が50Hzと60Hzに分かれてしまうので、このようなことにあらかじめ注意して選んでください。
ポンプを動かすタイマーは、Flood&Drain システム同様に問答無用で「分きざみで電源のOn/Offができるデジタルタイマー」をチョイスしてください。
ポンプを動かすタイマーは、Flood&Drain システム同様に問答無用で「分きざみで電源のOn/Offができるデジタルタイマー」をチョイスしてください。
ということで、再循環式ドリップ・システム「ジェミニ」のようなシステムで、「ドリップ回数多すぎるかも? 」「 ドリップ分数が長すぎなんじゃない? 」など、根と培地が湿りすぎている時は、ほとんどの根が茶色くなってしまったり、茎がほそぉ〜くひょろひょろと徒長生長している、開花しても結実しないで雌花がポロポロ落ちていってしまう、などの症状が出ます。
また、再循環式システムにあってない培地や肥料類を使っていても、嫌気発酵してpH値が8以上にグングンあがってしまったり、夏は酸欠で根が茶色くボロボロと変色して、生長がとまったりします。
逆に冬は、枯死した根をそのままにしすぎていると、好気発酵を起こすので有機酸がつくられてpH値が4.0以下に下がり過ぎてしまいます。
ということで、DWC、Flood&Drain、再循環式ドリップをはじめ、エアロポニック、NFTなど、培養液を再循環させるあらゆるハイドロポニック・システムには、Dutch Formula とCANNA AQUA肥料がおすすめです。
再循環式システム専用肥料「 CANNA AQUA Vega 」、「CANNA AQUA Flores」は、培養液のpH値が最適範囲からはずれない肥料設計になっています。CANNA AQUAシリーズをはじめ、CANNAのすべての肥料は、重金属や軽金属、過剰な吸い残し成分、の心配がないので、収穫時期の残留肥料の心配も、あ・り・ま・せ・ん!!!!