2012年9月28日金曜日

室内栽培 〜 幼苗期の管理の基本 〜

「貧民を堆肥にしては、どうだろうか・・・」
このアホのような提案は、農産物の収穫量を真剣にふやしたいと試行錯誤していた19世紀イギリスのガーデナーたちによって、真剣に検討されていたそうです。

「生きてる人間を? 肥料にする? ちょっとアタマが気の毒なヒトのなかねぇ・・・」と、思わず笑ってしまいますが、1800年代中ごろにリービッヒが「肥料」という概念を生み出し、中米でバットグアノが見つかるまでは、動物はもちろんヒトの死体がおもな堆肥にされていたそうなのです。

・・・さて、作物が人命よりも貴重だった19世紀とはうってかわって、現在は、必須肥料成分がすべて入った便利な複合肥料がたくさん手に入ります。

 あとは、それをどう使いこなすか??? という課題が大きくなると思うのですが、まずはステップ1の「発芽からの幼苗期」のベーシックな管理方法です。「挿し木からの苗」とは、肥料濃度管理がちょこっとちがうので「発芽スタート」か「挿し木スタート」かで管理方法に注意が必要です。

「幼苗期」とは、たとえばトマトならタネが発芽してフタバが展開し、そのど真ん中から本葉がひょっこり顔をだして広がってから、本葉が2〜3組くらいになるまでの間です。

 まず、悩むのが「光の強さ」ですよね。
発芽からの幼苗期はカヨワイので、窓辺越しの太陽のあかりか、蛍光灯の明るさくらいがベストかと思います。(個体差あり!)

←蛍光灯タイプのグロウランプで、約15,000ルクス〜20,000ルクスくらいで管理しています。たとえば窓辺などに置いておいて、苗のアタマがグイ〜ッと光の方に向いてしまうようなら、光をもう少し強くしてもいいかな? という感じです。

試しに光を強くしてみた場合、1〜2時間後に必ず苗の様子をチェックしてみて、もしもダラ〜ンと萎れてしまってるならば、すぐ日陰に避難させます。翌日くらいに、苗がシャキッと立ち直ったら、弱い光にもどした環境で管理します。









次にとっても重要なのは、「気温と湿度」です。いまの季節だと、昼間の気温は24℃前後でベストだと思いますが、問題は「湿度、湿り気!!!」です。晴れて風が強い日と、曇っている日では、いくら室内といえども「湿度」は10%も軽く差があります。

「発芽」または「挿し木」どちらの「幼苗期」でも共通してますが、湿度は最低50%はあったほうがいいです。理想は60%〜80%ほどと、高めが理想です。
「幼苗期」以外でも、たとえば培養液を濃いめにしたいときや「光量」を強くしたときは、かならず「湿度」を70%前後ほど確保した方が無難です。




しかし、ゼッタイにしてはいけないのが、かんかん照りの光の下での「葉面スプレー」です。

24時間以上葉っぱがぬれたまま直射日光の光に当たると、光合成する酵素が働かなくなってしまうんだそうなので、「葉面スプレー」は、曇りやランプが消える1時間ほど前など、かならず弱光下でせねばなりません・・・
葉っぱを濡らさないようにして、グロウルームの湿度を上げたい場合は、濡れたタオルを横っちょにおくとか、水がはいったペットボトルを横っちょに置くとか、水を横っちょの床面にスプレーするとか、サマザマザマな工夫があるかと思います。












そして次にアタマを悩ますのが、本葉がでてからの「培養液管理」かと思いますが、これは「発芽培地」によって、すこ〜しづつちがいますが、基本は同じです。

まずは、春夏秋冬のいついかなるときでも、与える水の水温を18℃〜24℃程度にし、培地の表面がやや乾いてきたころに水やりをします。(培地がひたすらヒタヒタと湿っているのはNGですし、カラッカラに乾かしすぎもNGです。)

水やりの水には、「根っこの活力剤をうすめた培養液」が間違いないのですが、ロックウール培地やココ培地など「肥料成分がほぼ含まれていない発芽培地」は、本葉がでたら「基本濃度の2倍〜4倍ほどの薄めのベース肥料培養液(EC値0.5〜0.8mS/cm、導電率200〜400ppmからスタート) 」をあげはじめます。ベース肥料の希釈濃度は、植物の強さによって、ずいぶんと開きがありますが、薄ければ薄いほど失敗が少なく無難です。

いちかばちか、EC値が濃いめの培養液をあげる場合は、ゼンブの苗に同じ培養液をあげずにどれかヒトツだけに実験的にあげてみるといいです。翌日チェックしてみて、もしもゲンキに新芽が展開してきてるなら、全ての苗に同じ濃度の培養液をあげればいいし、もしも苗がクタッと萎れてしまったとか、葉っぱのフチがちょっと白く焼けてちぢれてしまった、などの肥料焼けの症状がでてしまったら、水か根の活力剤の培養液で培地を洗い流しつつ、弱光下に置いて様子を見ます。



次に「CANNA TERRA ポッティング・ミックス培土」の場合です。TERRA培土には少しの肥料が入っているせいで、EC値がもともと1.2mS/cmほどあるため、発芽や挿し木用の培地としては、あまり向かないのですが、幼苗期にはココやロックウールよりも勝手に元気に育ってくれる、というメリットがあります。

ココ培地で発芽させた後、根が伸びてから植えかえたトマト苗「イエロー・ミミ」の「左 : ココ培地」と「右 : TERRA培土」の生長のチガイです。















クローンの挿し木苗とちがって、種子からスタートさせた苗は、もちろん生長度合いに個体差がでますが、全体的に「TERRA培土」のほうが生長がはやいようです。
↓この苗は「アイコ」です。やはりTERRAの方が本葉展開が早いです。











左 : TERRA培土の「レッド・オレ」
右 :ココ培地の「レッド・オレ」

これらはいずれも、「ココ培地+セルトレー」で発芽させた後に、セルトレーの底穴から根っこがはみ出してきたタイミングで、2号鉢のココとTERRA培土へ植えかえました。









元肥がはいってる「CANNA TERRAポッティング・ミックス培土」には、培土が乾いて軽くなった時に、根っこの活力剤の培養液のみを与えていて、まだ一度もベース肥料の培養液をあげていませんが、これだけ生長に差が出てしまいました・・・

これは、ココ培地にはもう少し濃い培養液をあげても大丈夫だよ、ということなのかもしれません。


TERRA培土はこの後、生長期の間だけは肥料は水やり3回に1回だけにします。残りの2回の水やりは、活力剤のみを培養液にします。個体差はありますが花が咲くころになると培土のなかの元肥が切れてくるので、ほぼ毎回ベース肥料の培養液をあげるようにします。

COCO培地は、生長〜開花をとおして毎回しっかりとスケジュールどおりのベース肥料培養液をあげます。培養液の管理をきちっとしていると、結果的にCOCO培地のほうが収穫量も味もよくなりますが、TERRA培土よりも手間がかかります。




ちなみに「挿し木からスタートさせた苗」は、根が出た挿し木苗には、ほぼ「幼苗の期間」というものが存在しません。挿し木の場合は、発根した苗をココ培地なりTERRA培土なりに定植してから新芽がでてくるまでの間だけ、通常値の2倍にうすめたベース肥料培養液をあげますが、新芽がでてからは通常の濃さの培養液にしないと徒長しやすくなったり開花が遅くなったりします。また、挿し木苗はすでに花を咲かせるホルモンをもってるので、例えばトマトの挿し木苗であれば、15cmほどの高さになったら、とっとと開花のスケジュール環境にしてしまいます。こうすれば果実の収穫までの期間を大幅に節約できるのに、収量はさほど減りません。



・・・ということで、同じ幼苗期でもココ培地やロックウール培地などのハイドロ栽培と、TERRAポッティング・ミックス培土などの養液土耕では、培養液のあげ方がすこしちがいますが、生長のわずかな差にはそこまで神経質にならず、スクスク育っているようなら、それでヨシとする割り切りも必要です。


もっとも気にせねばならないことは、ほとんどの植物は、強い光、強い肥料、強い乾燥、凍える冷たさ、うだる暑さ、水のやりすぎ、水のやらなさ過ぎ・・・のどれかか一因があると、うまく育たなくなる、ということです。

葉っぱがちぢれた、新芽がいじけた、苗が萎れた、など生長にトラブルが見られたら、いついかなるときでも、光を弱くし、培地の肥料を洗い流し、湿度を60%ほどに維持して、様子を見てあげるのが基本かなと思います。


もしも、なにかに迷ったら、いついかなるときでも一番大切な基本は、マニュアルやスケジュールに振り回されず、生長の様子を自分の目で見て、まず上のような症状がでていないかを観察して、光の強さ、肥料の濃さ、水やりのタイミングなどを決めていくことだと思います。栽培のマニュアルやスケジュール表は、あくまですべての条件が理想環境であるという前提での数値だからです・・・