秋からスタートさせた「イチゴの室内栽培」。培地の乾く速度がゆ〜っっっくりな冬のあいだは、2週間ごとに一回くらいのペースの水やりで間に合ってました。
しかし、季節はすでに春。しかも、5月のゴールデン・ウィークをすぎると、恐ろしいほどに乾くのが早くなり、水やりの回数が増えていきます。
4月も、あと一週間をきりました。ここいらへんで、頭のスイッチを切りかえておかなかったばっかりに、GWの連休明けに別人のように枯れはれたイチゴを目にするハメになるのです。
・・・と、いうことで、栓をひねれば、あとは勝手に水やりをやっといてくれる、「ドリップ・システム」をココ培地栽培のイチゴたちにセットアップしてみました。
ドリップ・イリゲーション(点滴灌漑)というのは、農作物への水やりを、ホースでジャージャーと豪勢に与えるのではく、ポタポタとシズク状にして、ゆ〜っくり、ゆ〜っくりトロトロと水やりをする方法です。
これはたしか、水が貴重な中東イスラエルで「 貴重な水を、とにもかくにも一滴もムダにすることなく作物に与えなくては、農業がなりたたない!」というニーズから生まれた灌漑方法だったと思います。実際にイスラエルって国は、砂漠のなかにありながら、栽培技術と農業用資材ともに、非常に非常に優秀な農業大国で、世界中のハイドロポニック・ガーデナーさんたちは、知らず知らずその恩恵にあずかってるってことが少なからずあります。
で、ドリップ・イリゲーションのメリットとは・・・
ジョウロやホースのように、水量が多く流れが速い水は、土のなかであっというまに通り道をつくってしまい、水の使用量が多い割には、しっとりいい感じに土全体に水が潤わないけど、ポタポタと滴る水滴は、ジワリジワリと水が染みわたる範囲を広げていくので、最低限の水の量で土全体がむらなく潤いやすい、ってことのようで、実際やってみると、その通りです。
と、いうことで、早速、室内栽培用ドリップ・システムの説明です。ここでは、たかだかタタミ一畳程度、8株用の室内栽培ドリップ・システムのセッティングなので、電力を使わず、ホームセンターでGETできる給水コック付き水タンク20Lを養液タンクにしました。水タンクの給水コックにピッタリサイズの散水ホースを見つけてつなぎ、ポットよりも高い位置に設置して、そこから各ポットへドリップするシステムにしました。
まず、メインのドリップ・ラインを通します。ドリップ・ラインってのは、培養液や水を流すホースのことで、ポリエチレンパイプや散水用ホースなどガーデナーが使いやすい材質をチョイスします。
一般的に農場や庭などでは20mm(3/4")以上の径のホースが使われることが多いのですが、室内など規模の小さなドリップ・システムでは、13mm(1/2")径ホースをメインのドリップラインにして、「スパゲッティ・チュービング」なんて呼ばれる3mm〜6mm(1/8"〜1/4")の細いチューブで、各ポットへ分岐させるのが一般的です。
↓中央の黒いホースは内径13mmの、材質がHDPE製のいわゆる「ポリパイプ」というものを使用しています(劣化に強いですが、ものすごく固くて、加工のたびにイチイチ奥歯が折れそうになるので、やわらかい散水用の塩ビ製ホースのほうが楽です)。
メインのドリップ・ラインの片端は、水タンクの給水コックにつなげます。(もう片一方は、13mmホースエンドなどを使って、ふさぎます。)
ちなみに、メインのドリップ・ライン内径は13mmなので、水タンクの給水コックにはつなげられません。その辺は、柔軟性のある塩ビホースを間にカマすとか異径継手つかうとかして各自工夫してください、ということになります。
今回は、この13mmポリパイプに、等間隔に4つの穴を空け、ひとつの穴から2つのポットに、計8ポットへドリップできるようにしました。
ホースパンチやチューブパンチで4mm径の穴を空けて、6mmチューブを各ポットまで分岐させるためのドリッパー・マニホールドをガシッと取りつけます。※ホースにパンチで穴を開けるときは、イッパツで決めないと、この穴から水がチョロチョロと漏れだす(つまりムダがでるってことです)原因になるし、やり直しがききません。ホースは長めにGETしておくのが安心です。
高い場所に設置した20Lサイズの養液タンクの給水コックを開き、培養液を流してみると、マニホールドからフツフツと培養液があふれ出てきます。
いずれにしても、どこかしらでチョロチョロと漏れだすことは、なにかしらきっと起こるので、栽培テーブルに流れた水が排水タンクに集まるようにするなど、床に滴り落ちないような、システムにしておく必要があります。
↓ズバリこのシステム! でなくても、こういう要領になってるシステムがいいねってことです。
ドリッパー・マニホールドに、4mドリッパー2分岐をのっけてみると、ピューピューッと培養液が左右に分かれました。
6mmチューブの先端にドリッパーをとりつけます。今回は最もシンプルな、4mmドリッパーとチューブホルダーの組み合わせにしました。
ドリッパーをとりつけたチューブホルダーをココ培地にプサッと差し込み固定して、培養液を流すと、ドリッパーからポタポタと培養液が滴り落ちはじめました。ちなみに、「ドリッパー/dripper」のことを「エミッター/emitter」と呼ぶこともありますが、同じもの、と理解してもほぼ問題ないです。
「ところで、ドリッパーつけないとダメなの?」、というオオチャクな意見も出てきそうなもんです。いけないこともないですが、ドリッパーをつけないで培養液を流すと、このようにドクドクと流れることとなり、水の通り道ができてしまい培地全体に染み渡りにくくなり養液のムダが多くなります。「じゃあポットの下に受け皿を置いて溜めてしまえばムダはないんじゃない?」とか思いつく場合、そのへんは各自、たのしく存分に工夫なすってください。
・・・ということで、水タンクの給水コックを開けば、8つのポットにポタポタと培養液が勝手にドリップされます。今回このドリップ・システムでは10リットルの培養液がなくなるまで、だいたい3時間かかりました。時間はかかりますが、どのポットもキチンと培養液が行き渡ってました。(手で持ってみて手応えをほとんど感じないほど乾いたら、ポット容量の約20%〜30%の培養液を与えます。または、排水量が与えた培養液量の10%ほどになればOKデス。)
ところで、
いくつものポットに同時に水やりをするシステムで悩むのが「生長する勢いの違いで、乾くのがおそいポットがでてくる。」ってぇことです。または「ココ培地とポッティング培土、両方つかってる。」ってぇこともあります。そういう時は、ドリッパーの手前にインラインコック(止水栓)をはさんでおけば、キュッとひねって培養液のドリップを止水できます。
最後に、ドリッパーにはいろんな種類がありますが、その選び方をカンタンに。
4mmドリッパーは、価格が安いんですが、ポットを置く位置に高低差があると、ドリップにムラがでやすくなります。あと、長期間使うと必ず目詰まりしてくるのでメンテナンスは必須です。なので、あまり広くない栽培スペース、多すぎないポット数でのドリップ・システムに向いてます。
4mmドリップホルダー、スティック型のこのドリッパーは、6mmチューブにつなげて培地に挿すだけで培養液をドリップできます。これも水圧が下がるとドリップされにくくなるし、目づまりもするので、そんなに広くない栽培スペースのホビーガーデニング向きです。
さいごにPCドリッパー。このPCとはパソコンにつなげるんじゃなくって、「水圧セルフ調整機能」の意味です。農場など広大でデコボコとした場所にドリップラインをひいて、培養液や水を流しても、ドリッパー内部で水圧を調整してくれるので、坂のテッペンのPCドリッパーでも、坂の下のPCドリッパーでも、どこでも吐水量が同じになるっていう機能がついたドリッパーです。
ドリップイリゲーション・システムでは、「 水や培養液を何ヶ月もず〜っと流していると、成分がガビガビに固まったりして、ドリッパーが目づまりを起こして、水がドリップされなくなって作物が枯れる! 」というトラブルが起こることは珍しくないので、「ドリッパーがつまりを起こしてないか?」というチェックが必須だったのですが、このPCドリッパーってのは、内部の詰まりを自分で吐き出す「セルフクリーニング」というありがたい機能がついています。
とはいえ、PC機能付きだからといって、いつナンドキでも絶対に詰まらない! とはいえないので、メンテナンスが多少ラクチンになる、ってくらいの感じかと思います。
PCドリッパーは、栽培スペースが広かったりポット数が多い場合に向いていますが、PCでないものよりも高い水圧が必要なので、流量が大きな循環ポンプや加圧ポンプを使った方が確実です。
この流量の計算方法(ポンプサイズの決め方)ですが・・・
1時間に4リットルをドリップできる(4L/h)ドリッパーを10コのポットに取りつけたい場合 : 4L/hX10コ = 40L/h必要・・・となります。
が、これはかなりバックリ能天気な計算方法で、何ヘクタールという広大な農場でのドリップ・システムの設計では、ホース径のチョイスからはじまり、かなり綿密な計算が必要になります。