さて、先週の土曜日5月25日は満月,種まきにベストなタイミングでした。
ということでその前日の金曜日に「花豆」の種まきをしたところ、ものの4日ほどでミゴトな発芽ぶりを見せてくれました。花豆の正式名は、「ベニバナインゲン」です。
花豆には、紫や白があります。紫色の「紫花豆」が優性遺伝子で、「白花豆」は劣勢遺伝子なんだそうですが、「紫」と「白」をいっしょに植えたほうが収穫量が増えるんだそうです。
さてさて、「発芽は、水、温度、たまに光、そしてなにより酸素!」ということで、今回は、エアレーションを入れた水に花豆たちを一晩じっくりと浸して、それからココ培地に「播種(はしゅ)」しました。
↓は、「花豆」ではありません。今は「大豆」に吸水させてます。種子の量とエアストーンの大きさに合った容器でOKだと思います。
鮮度のよい種は、なんにもしなくても発芽しやすいのですが、それでも管理状態によっては発芽率が低かったり、発芽のタイミングがバラバラになってしまったりします。そこで種まきの前に、たっぷりの水に種を一晩ひたしておくと、十分に吸水させることができるので発芽が早くなったり発芽のタイミングがそろいやすくなります。
ところで、春から初夏の種まきは、発芽に適した水温を維持できますが、水中の酸素量が減るので酸欠が心配だし、雑菌の発生も心配です。
ということで、まず種子を浸す水にはpHダウナーを数滴だけ加えて、雑菌が繁殖しにくい弱酸性にします。
ちなみに、水道水には炭酸が含まれているので、ただの水道水にエアポンプでエアレーションを続けると炭酸が空気中に抜けていくにつれて、水のpH値が上がります。カルキが完全に抜けると水道水のpH値は、だいたいpH7.5〜8.0の微弱なアルカリ性で安定します。
なので、「 ただの水道水にエアレーションを続けていたらpH値があがってしまった!!! ナニが原因なんだ!!!!!」と、アタフタする必要はありません。
植物に与える培養液は、肥料濃度(EC値)が高い培養液ほど、pH値とEC値の変動は少なくなります。逆にいえば、培養液の肥料濃度が薄い培養液ほど、植物の吸収などによってpH値とEC値の変動は大きくなります。
※ちなみに一口にエアポンプといっても、多くの空気を水中に通気できる「インペラー式エアポンプ」というものは、培養液にCO2も多く吹き込まれるため、培養液のpH値がどんどん下がってしまうということがたまに起きるようです。欧米でインペラー・ポンプをつかった水耕栽培システムがかなり話題になったことがありましたが、容量よりも大きなポンプをつかってしまうと、培養液のpH値が下がり過ぎてしまう問題が起こったようです。それでも、インペラー式のエアポンプは培養液中に酸素を豊富に取り込めるため、水温が上がってしまう真夏にはヨサゲだし、根毛が発生しやすくなるというメリットもあります。
種を浸す水に、根の活力剤を加えるのもGoodです。コノ場合は、活力剤を加えたあとにpH値を弱酸性に調整します。
このように、pH値調整した水にエアレーションしつつ、一晩ひたした「花豆」の種は、その4日後からワッサワッサとゲンキに発芽しはじめました。
そして、コトゴトく失敗を続けてきた「沈丁花」の挿し木取りでしたが、今年はなんとか成功しました。
その勝因は,今思えば「炭酸水の葉面スプレー」だったと思います。とはいえ、炭酸スプレーをした挿し木と、していない挿し木で発根率の比較をしなかったので、言ったもん勝ちになってしまいますが、とにかく「挿し木の発根率と発根量」を高める秘訣のひとつは、プラント体内の「C/N比」を高くすることです。
このブログで何度か登場してきた「C/N比」とは「炭素/チッ素の比率」のことですが、挿し木をとる親株(マザープラント)の植物体内の炭素(Carbon)の割合が、体内のチッ素(Nitrogen)よりも多いと発根しやすい挿し木となり、炭素の割合がチッ素よりも少ないと発根する前に腐りやすくなる・・・ということです。
「じゃあ,挿し木のC/N比を高くするには、ナニをどうすればいいの?」ということですが・・・親株のC/N比が高い部分、または親株のC/N比を高くしてから、挿し木をとればいいわけです。
まず、土壌で育てている植物たち、たとえば果樹類、バラやハーブなどの宿根類では、日当りのよい場所で管理したうえで、3日以上よく晴れた日のあとなら、体内のチッ素量が低下しているので、挿し木とりに理想的です。
また、5月〜6月までの春から梅雨の間と、9月〜11月の初秋から晩秋にかけて挿し木取りをすると発根率が高くなります。これらは季節の変化が原因で、土壌中のC/N比が上がる期間にあたります。
冬が終わり春になり気温が高くなり雨が降ると、土壌中で微生物がグワアァァァッッッと増殖します。微生物たちは無機チッ素をガッガッツ食べて有機チッ素に変えたりガスに気体化させるヤツもいたりして、結果的に土壌中の無機チッ素が少なくなり炭素量が上がるため、土の中のC/N比が上がります。秋バージョンでは、枯れ落ちた植物たちが地表に落ちて、これを分解する微生物が活性化するためC/N比が上がります。
このような理由で土壌中のC/N比がとくに高くなるのは、5月〜6月までの間と9月〜11月くらいまでの秋・・・
ということになるため、この時期の植物は体内のC/N比も高くなり、さらに数日晴れたあとならば発根しやすい挿し木をとることができます。(低温に弱い植物は春に挿し木、高温に弱い植物は秋に挿し木をすると,管理がラクチンだと思います。)
一方、水耕栽培やココ栽培などの培養液で育てているハイドロポニック栽培の植物の場合は、C/N比が自然に上がるということはありません。ガーデナー自身で、プラントのC/N比を高くしてあげる工夫が欠かせません。
まずイチバン簡単なのは、光量とCO2濃度を最適に保って光合成運動量を増やすことです。適度な光量とは、植物育成ランプでいえば夏野菜では「MH250W〜400W」、冬野菜では「HPS250W〜400W」がナイスだね!と言われています。
また、親株のなるべく根元近くのC/N比が高い部分で、イキオイのよい横枝をカットして挿し木にすることですが、その前に、あらかじめ親株に与える培養液の肥料濃度をうすく管理して、植物体内のチッ素量を減らす必要があります。「このコは親株としてのみ育てる!」と決めてある場合は、薄めの生長期用の肥料レシピで培養液管理を続けると同時に、有機活力剤をたくさん与えて体内のチッ素流転を促しますが、夏野菜などの一年草の親株は約半年から1年くらいがマザープラントとしての寿命だそうです。
しかし、もしも親株体内に多くのチッ素がありすぎると、非常に発根しにくい挿し木となってしまうので、挿し木をとる前には必ず親株の体内チッ素量を減らすことが必要です。
また、挿し木をスムーズに発根させるには、水分、酸素、二酸化炭素とともに、適度な光と湿度が欠かせませんが、挿し木管理の時にCO2濃度を1500ppmほどに維持するとGoodだね!ということも以前ご紹介したことが・・・そういえばありました。
http://desktopfarmer.blogspot.jp/2011/12/4.html