2014年5月30日金曜日

Flood & Drain System あるいは、Ebb & Flow

やっと晴れた! と思ったら、ウンザリするような蒸し暑さです。
こんな天気がつづくと、プランターには案の定キノコが立ちます。


























育てやすいとはいえないバラ「アンティークレース」は、いつもより多く花をつけました。雨に当たるとボタボタと花が落ちるので、突然のスコールが降りだすたびに、急いで軒先にとりこまなくてはなりません。洗濯物よりも優先されます。
ところでこのバラだけ、アリンコから異常に好かれます。



























冬のあいだ抜かずに放置しておいたら復活して花を咲かせた「ディアスキア」。毎年買い替える必要がないとわかって、うれしい発見となりました。




























消費するのを忘れて、今回もまんまと開花させてしまった「コリアンダー」は、最近話題のベルギービールのフレーバーとしても伝統的に活躍してきました。




























一方、やっと収穫までこぎ着けた固定種のニンジン「黒田五寸」です。これっぽっちですが、加熱せずにそのままポリポリ食べてしまっても甘くておいしいです。






















今朝ご近所のかたからいただきました。「アサツキ」の根っこです。「ゴハンがすすむよ〜」と、おっしゃってました。
昨年と同様に細かく刻んで味噌とあえていただきま〜す。
























・・・ということで、フラッド&ドレイン・システムについては、昨年秋から折に触れてご紹介しています。




























フラッド&ドレインとは、「Flood= 冠水する、と、Drain=排水する」


・・・というとおり、培養液を「冠水して排水」させて、植物たちに培養液を与える方法です。「Ebb & Flow」とも呼ばれています。


同じ培養液をくり返しフラッドさせるので、培地はクレイ・ペブルスを使います。ロックウール培地でもできないことはないですが、「ロックウールはクレイ・ペブルスよりも保水性が高く含気性が低い、くり返し同じ培養液をつかっていると肥料成分のバランスが少しずつ崩れる・・・」などなどの理由で、特に半年以上の長期栽培になる場合は、ベリーベストではありません。


↓苗がこんなに小さい時は、午前中にたった一回のフラッドだけでOKです(真夏は、2回必要かもしれません)。苗が大きく育つにつれフラッド回数を増やしていきます。下段のリザーバータンクから循環ポンプをつかって培養液を上段の栽培テーブルに汲み上げます。


















栽培テーブルは「Grow Table」とか「Grow Tray」などいろいろな呼び名があるので、栽培トレイとよぶこともあります。

深さが15cm程度の栽培テーブルが主流ですが、大きく育つ植物を一年以上育てると伸びた根っこがフラッド口やドレイン口をふさいでしまいトラブルが起こりやすくなるので、最近は20cm以上の深めのテーブルが多く、さらにバケツ自体を栽培テーブルのかわりするタイプも登場しています。

栽培テーブルの中央、またはもっとも低いところに「INLET(流入口)」と「OUTLET(排水口)」の2つをとりつけてあって、フラッドさせた培養液は栽培テーブルのどの位置まで溜めるのがベストなのかと言えば、培地の上部表面から1cm下までが限度です。水位は「OUTLET」側の高さで調節します。



↓リザーバータンクから培養液がどんどん汲み上げられ、ちょうど「OUTLET」側のスクリーンから排水がはじまった時の様子です。OUTLETから排水されはじめたタイミングで循環ポンプをとめてフラッドを終了させてしまうのがベストです。





















フラッド & ドレイン・システムは、しくみもパーツも思ったよりシンプルなので、設置がむずかしくなく、酸素が豊富になるので生長が早く病気にも強く、収穫も多くなることが最大のメリットです。
実際、今回のトマトたちは春を過ぎたころから「サビダニ」がでましたが、症状がすすむスピードがものすごく遅かったので、ほとんど気になりませんでした。根に酸素が触れていると免疫力が高くなることが、つくづく理解できました。


















「フラッド & ドレイン・システム」で、覚えておきたいこととは・・・

  1. 大粒タイプのクレイ・ペブルスを使います。これは、良くも悪くも保水性が低いことを理解しておく必要があります。
    保水性が低いクレイ・ペブルス培地は、発芽にはまったく向きません。しかし、挿し木とりには向いているので、挿し木から収穫までをワンシステムでおこなうことが可能です。とはいえ、エアロポニック・システムほど効率の良いクローンマシーンとは決して言えません。
  2. 品質確かなクレイ・ペブルス培地を選ぶ必要があります。ハイドロポニック用ではない「クレイ・ペブルスに似たエクステリア用砂利」などは、予想だにしない生長トラブルが起こりえるため論外です・・・

    というのも、なにか生長トラブルがおこると、肥料が原因だと思ってしまうガーデナーさんが少なからずいるのですが、よくよく話を聞くと、培地のチョイスに問題があったり、栽培システムに適した培地を選んでいなかったり、基本的な培養液の管理に思いちがいがあったりetc、ということがタクサンあります・・・というより、ゼンブそれです。

  3. 発芽、または挿し木の発根のステップでは、保水性の高いロックウールを使います。プロパゲータ(育苗専用システム)などで、3cmキューブほどのロックウールで発芽や発根をさせたら、5cm〜10cmキューブのロックウールへセットしてからフラッド & ドレイン・システムのクレイ・ペブルスに植えこみます。

    3cmほどのロックウールのまま、クレイペブルス培地に植えこんで、システムでの栽培をスタートさせてしまうと、保水性が少なすぎて根っこが思うように伸びません。「ちいさなロックウールのまま、もう植えこんでしまった!」という場合は、フラッド回数を増やすか、時おりハンドウォータリングで培養液をロックウールにかけてあげる、しかありませんが、酸素が少なくなるので、根ぐされや徒長、または手間がかかる、といったデメリットはあります。

  4. 欧米では、このタイプのシステムで、何年にもわたってパパイヤを育てている強者ガーデナーもいらっしゃいますが、長くても一年以内に栽培が終了する植物をチョイスしたほうが無難です。

    要するに、「手間を惜しまないのであれば、何だって栽培できるのです!!!」、が「手間が少なくて、収穫が豊富!!! というハイドロポニックスのメリットは一体どこへ??? 」という気持ちになるよね!!!! ということです。
  5. フラッドは、一回につき15分までが目安です。
    夜間は、基本的に昼よりも少ない回数のフラッドでOKですが、一日を通して3〜4時間に一回ごとのフラッドをする、という設定でも問題は起こりませんでした。

    ポンプを作動させる分数ですが、基本的には、栽培テーブルに培養液がくみあがっていき、ドレイン口から排水がはじまるまでの、たった2分〜4分ほどでOKです。
    たった数分間作動させるためには、デジタルタイマーがベストです。なかには、モーター機器と作動とせるとズレていくデジタルタイマーもあるので、対応しているものをチョイスしてください。


    循環ポンプの吐水量(揚程の高さ)は、栽培テーブルの高さまで揚水できればOKなので、大きすぎるポンプをそろえる必要はありません(・・・が、あくまで好みです)。

    フラッドが少なすぎると、もちろん生長が遅くなり、多すぎると、もちろん徒長しやすくなったり根が傷みやすくなります。この辺りの判断でフラッド回数や時間を決めることが大切なので、このシステムは、中級〜上級ガーデナーのほうが向いていると言われています。

    ※水が足りなくてしおれた場合は、茎ごと葉っぱもクタッとなりますが、根ぐされの場合は、葉っぱだけクタッとなって茎はピンッとしています。
  6. 一日のほとんどがドレイン・サイクルなので根っこには酸素が豊富にあります。リザーバータンク内にエアレーションをする必要はありませんが、そんな理由から、有機活力剤は、あまりたくさん使うことができません。活力剤をたくさん入れすぎると、オリなどがでやすくポンプやパーツが目詰まりしやすくなることがあります。

    また、培養液は1〜2週間ごとにすべて取りかえる必要があるので、培養液の使用量は多くなります。リザーバータンクは、最低でも栽培テーブル容量の1.5倍の容量が必要です。

  7. フラッド & ドレイン・システムでは、植物の根っこはダイレクトに空気に触れていられるので、イチゴやキュウリなど酸素要求量の多い果菜類の栽培も可能です。

2014年5月22日木曜日

ホップ・ヘッズからのお便り

ここは、ジュラ紀を再現した博物館・・・

























・・・ではありません。今日の突然のスコールがあまりにすごすぎて、雨水管から放水された雨水のようすがあまりに「滝」そのものだったので、遊んでみました。



























さてさてさてさて、仕事場で育てているホップを以前におくばりした方から、「Thanks! さっそく植えましたよ〜!」という、とてもうれしいお便りと、お写真がとどきました。
「センテニアル」、「カスケード」、「チヌーク」です。




























↓このホップは、この方がお育てになってらした日本オリジナルの品種だそうです。


























特徴はザーツに似ているそうす。日本でのホップ栽培に詳しいおヒトならピン!とくる通り、こちらの方は岩手県在住でらっしゃいます。

























and his nice beer ... cheers!




























・・・と、ここで終わらせるつもりでしたが、これで終わりではなかったのです!






なんということでしょう!
写真を受け取った数日後のこと、「このザーツににた日本品種ホップ」がワタシのもとに届いたのです!!!
「うれしかったから、お返しに・・・」と、この方が育ててらしたホップを送ってくだすったんですね!  アメリカン・ホップを西洋の方に送り、ニッポン品種ホップを西洋の方からいただく・・・というクロスにクロスを重ねた、それはそれはタノシい事態になったわけです。こんなミラクルな交流は、ホントにうれしい!



























Xソ暑かった週末のせいで、すでに展開していた葉っぱは萎れてダメになってしまいましたが、ココ培地に植えかえて加湿ミストをあてておいてやると、新しく伸びたツルからすぐに葉っぱが展開しはじめました。



























萎れてしまった葉っぱの付け根からも、もうすでにわき芽が元気に展開しはじめています。しばらくココ培地のポット栽培で静養させてから、地植えにします。




























ところで、地植えしてから3年目のホップ「カスケード」。もう毛花が咲き始めています。ホップは、ツルが2〜3m伸びてからでないと花をつけないようです。

























「変わった葉っぱのホップが伸びてきたな・・・」と思ったら、去年植えた「花豆」でした。去年種からスタートさせた「花豆」の根っこが、冬のあいだイモのようにパッツパツに太っていたので、放置していたら、まんまと今年もツルが伸びだしました。「花豆」は、植えっぱなしOKな宿根草だったことを生まれて初めて知りました。が、ミゴトな「花豆」を実らせてくれるかどうかは、秋になるまで分かりません。





















2014年5月19日月曜日

水耕栽培はずせないこと。パート2

半袖姿で歩く人々を見ることがまったくめずらしくないほどに、初夏を思わせるお天気が続きます。

そんな週末は、麻生区環境センターで「Veg&Fork マーケット」が開催されていました。


















川崎市麻生区は、JAによるファーマーズ・マーケット「セレサモス」があったり、柿生という地名からも分かる通り、日本最古の甘柿禅寺丸柿発祥の地だったり、なによりも川崎市でイチバン農地面積がひろく、まさに川崎の「農」を語る上では外せないエリアです。

当日の会場には、授乳ティピがあったりと、お子サマづれのファミリーにもうれしい気遣いが・・・




























距離的には近いのですが、気持ち的にはあまりなじみがない麻生区だったので、ようやくたどり着いたのは昼下がり、目的の自然栽培の農産物たちは、ことごとく売り切れていました。午前中は、ものすごい来場者の数があったそうです。また、農産物やコスメ、屋台グルメばかりでなく、ライブもやってました。プラプラ歩いてるだけでも飽きません。次回は秋の開催だそうなので、今度こそ、野菜やスイーツをGETしたいと、思います。




















さて、おハナシは180℃変わりまして、挿し木取りについてです。
↓手軽に失敗なく、さらに最短の日数で挿し木が発根できるシステムでは、「エアロポニック」がもっともパワフルです。
























エアロポニック・システムは、市販のシステムをGETしてもよいし、10L程度の小さなシステムならば、DIYで作ることもできます。

【その1】360℃マイクロスプレーでつくるエアロポニック・システム
http://desktopfarmer.blogspot.jp/2013/12/diy.html

【その2】挿し木取りのポイントをからめたエアロポニック・システムの作り方はこちら:「さあ、挿し木をとろう!!!」
http://desktopfarmer.blogspot.jp/2011/09/blog-post_09.html

「不親切なD・I・Yプチ講座〜クローンマシーン編〜」http://desktopfarmer.blogspot.jp/2011/09/diy.html






エアロポニック・システムでの挿し木取りに向く植物は、夏野菜やハーブなど茎がヤワラカく寿命が短い「草本=そうほん」に分類される植物です。

しかし、果樹、樹木など、生きている年月が長期間にわたり、表皮が木質化(もくしつか)し、木に育つ植物、いわゆる「木本=もくほん」の挿し木取りは、システムの管理が長期間にわたってしまうので、エアロポニック・システムは向きません(いやいや、何ヶ月でも根がでるまで管理できるのだ! という場合は、OKです)。


挿し木取りの大きなポイントは、

  1. 発根しやすい枝をえらぶ
  2. 乾燥を避けて湿度を高く保ち、培地の水切れを起こさない
  3. 高温、強い光は控える



1.「発根しやすい枝」ですが、

「トップのほうの新しく出た枝がいい!」というガーデナーも入れば、「いやいや、根元に近い古い枝のほうが、発根率がいい!」というガーデナーもいますが、理屈の上では、「C/N比=炭素率」が高くなってる根元の枝の方が発根しやすいコンディションだと思います。

C/N比と挿し木の発根に関しては、こちらでドーゾ!
http://desktopfarmer.blogspot.jp/2013/05/blog-post_30.html


イチバン大切なことは、挿し木をとる親株(マザープラント)に濃い肥料を与えないことです。「挿し木を取りたいな!」と思ったら、約一週間ほど薄めの培養液で管理して、体内のチッ素量を下げてからにします。

屋外で育てている植物であれば、3日以上よく晴れたあとに挿し木をとるようにすると発根しやすいコンディションになっているはずです。



2. 「湿度を保ち、水切れを起こさせない

挿し木の枝は、根がないので葉っぱから水分が蒸散しすぎるとすぐにしおれてしまいます。なので、「湿度」は、ものすごく大切です。植物は、葉っぱからも多少の水分や養分が吸収できるから、ということもあるのですが、大きな理由は、空気が乾燥するとニンゲンのお肌とおなじで、葉っぱの老化が早くすすんで細胞の修復力が弱まったり、新たな細胞分裂がしにくくなったりするからです・・・つまり発根しにくくなります。
湿度は、かならず温度とセットで管理せねばならんのですが、挿し木取りは温度25℃前後、湿度70%〜85%がGoodです・・・ちょうど今ごろの季節に、超音波加湿器をかけたような状態がベスト・・・と、想像してください。




3. 「高温、強い光は控える

しつこく言ってることなのですが、水温が上がると酸素がへります。そうなると、雑菌も増えやすく挿し木が腐りやすくなります。
とくに夏場は、エアロポニック・システムのポンプをずっと作動させて挿し木にスプレーしているとタンク内の水温をお湯状態にしてしまうので、タイマーで15分ON/OFFにするなど、挿し木の切り口が乾燥してしまわない程度に、ポンプを休ませることが必要になります。逆に水温が冷たくなりやすい冬は、ポンプを作動しつづけていれば水温を上げる効果があるってことになります。

挿し木取りのときの光の強さですが、強すぎる光は高温や乾燥もつれてくるのでゼッタイにNGで、晴れた日の日陰の明るさ・・・または10000lux以下で十分です。

「照度計なんて、買えないよ!」というおヒトは、こちらをドーゾ!
iPhoneが、照度メーターになります(・・・が、あくまで目安とお考えください)。
https://itunes.apple.com/jp/app/light-meter-lux-measurement/id642285909?mt=8&ign-mpt=uo%3D2
注意したいことは、栽培用LEDは光量が少なく挿し木取りに便利ですが、冷却ファンがついているので空気が乾燥しすぎることがよくあります。湿度計できっちり湿度をチェックしながら保湿を心がけることがポイントです。

また、30℃以上の高温は葉っぱからの水分蒸散がすすみ、発根する前にしおれやすくなったり、加湿していても雑菌がガツガツ増えやすいので、あたたかい春の曇りの日・・・を目指すことがポイントかと思います。




または、タイタンのようなフラッド&ドレイン・システムならば、挿し木取りから収穫までひとつのシステムでできるので便利です。それについては、また次回!







2014年5月12日月曜日

水耕栽培。ちょっとしたこと、でも外せない基本など。

先週につづき、屋外栽培のイチゴたちが、収穫時期となりました。

「ダンゴムシにすら、見向きもされないなんて、どーセスッパイにきまってる!!!」と、なかばフテクされながら、イチバンに色づいたイチゴを食べてみると・・・
























「あはっ!!! あまい! あま〜!!! おいし〜!!!」酸味もほどよくあって、とってもおいしかったです。例年は、GW連休を留守にしたせいで、水切れを起こしてしまっていましたが、今年はお出かけできなかったせいで、水切れも起こさず順調に完熟を迎えられて大成功でした。といっても、屋外栽培のイチゴは寒い冬のあいだは一切花をつけないので、大きさも味もよいイチゴを収穫できるのは、春になってからほぼ一回だけになります。この後も初夏まで花は咲いて実をつけますが、気温が高くなるせいで粒が小さくなったり、あまりおいしくなかったり、虫たちに横取りされやすくなります。

また、春になってから花や果実がついたイチゴ苗をお店でGETしておウチで植えても、イチゴは花をつけると根の生長がほとんどストップしてしまい活着がおそいので、あんまりよい果実を収穫することはできません。「イチゴをホンキでおウチで育てて収穫したい!」という場合は、チューリップのように年が超す前に定植をすませ、冬のあいだじっくりと育て十分に根っこを伸ばしておいてから、無事春を迎え花をつけさせる、ということがもっとも大切だと思います。


























さて、花が咲くと根っこの生長の勢いが衰えるのは、ほぼすべての野菜、植物にも共通していることです。その理由は、花を咲かせるには、ものすごい体力を使うので根っこを伸ばすほうにエネルギーを使わないようになる、ってことが大きいと記憶しています。「花が咲くんなら、もうすぐ枯れるのね・・・」という植物の意識から、前向きな老化現象をはじめる、とも言えるのかもしれません。

言い換えれば、花が咲くまでに根っこがあんまり張れていなくても、ツボミがついてしまったら、そこからはもう「いい感じの優秀な株」に変身することは、ありえないと思っていい・・・ってことです。
なので、発芽や挿し木が発根したら、そこからの生長期には、肥料やけとか、高温ストレスとか、水切れとか、とにかく生長をストップさせてしまうトラブルを起こさないように注意して、日々日々、グングンと順調に生長させることが、ものすごく重要になるんですねぇ。
これは、ほぼすべての植物に共通することなのですが、生長期は、根っこが毎日伸びるしグビグビと培養液を吸収するので、養分水分で体内がパツパツと太り、葉っぱは「バンザイッッッ!!!」と言わんばかりに空を向くし、朝イチバンには、根っこから吸いすぎた水分が葉っぱのフチから葉つゆとして、出します。

その後、ツボミがつき、開花し、果実が実っていくと、根っこの生長が衰えるので、葉っぱのバンザイの角度は低くなっていき、葉つゆもあまり見なくなっていきます(プロのトマト農家サンなんかは、3段以上花房がついても、葉つゆを出すことができるそうです・・・つまり根っこの生長も促進させることができてるってことのようです)。




「植物は、根がすべて!!!」という、よく耳にするフレーズは、決して大げさではない、ということが言いたいわけですが、この根っこのメカニズムを理解することは、ある意味では「どの栽培システムが、自分にベストなのか?」を決める大きな指針となると思います。


ハッキリ言って、現在流通している欧米の水耕栽培システムは、どれも大合格です・・・そのシステムの使い方と、向いてること向いてないこと、をきちんと理解したうえで栽培をおこなえば失敗することなどありえない、と言えると思います。

なので、「どれがイチバン優秀な水耕栽培システムなのか? 」という評判よりも、どれがイチバン自分にピッタリなのか?  という視点で選ぶことがベストだと思います。

まず、一株栽培用の循環式水耕栽培システム「GEMINI」。リザーバータンクと一体型で、培養液の容量もだいたい10Lくらいです。
こういうスタンドアローン型の水耕栽培システムのメリットは、目が行き届くから失敗しにくく、よい苗が育てやすい=多収穫になりやすい、ということと、培養液の使用量が大量ではないので、肥料コストがあまり掛からない、のでホビーガーデニングや挿し木をとるために育てる「マザープラント」の管理に最適です。

























一方のデメリットは、「こういう一株用の栽培システムでは、まかり間違っても多種類の植物や大量の苗をいっせいに栽培してはなりません」ということです・・・

理由はもちろん「ひとつひとつのシステムの培養液管理をしなくてはならないので、丸一日世話で終わるわりに、目が行き届かないからトラブルが多発する」という、シンプルな理由です。10L程度の培養液は、pH値も肥料濃度(EC値)も変化しやすく、夏には水温が上がって酸欠になりやすくなるので、毎日毎日気が抜けません。

このようなスタンドアローン型システムをいくつも連結して、リザーバータンクからいっせいに培養液をドリップしたり、フラッドできないかぎりは「培養液管理」というものが、重たくガーデナーの肩にのしかかりつづけます。

連結タイプは、リザーバータンクに多量の培養液を使用するので、pH値やEC値の変動は少なくなるし、「培養液の水温がランプの熱でお湯になってしまう」、という最悪の事態も多少防ぐことができます。
が、連結型の賛否両論な部分というのは、培養液が複数のシステムを行き来するので、どれかが病気になると感染スピードが早く、全体がダメになりやすい、ということです。あと、培養液量がだいたい100L以上あれば、pH値やEC値の変動も多少押さえられますが、7日〜14日に一度は、必ずすべての培養液を交換しなくてはならないので、肥料代はかさむし、有機活力剤やちぎれた根っこでチューブやポンプが詰まったりするトラブルも起きやすいので、ココ培地など有機培地とくらべると、システム自体のチェックとメンテナンスが欠かせません。


また、循環式水耕栽培システムは、クレイ・ペブルス培地がベストです。

根っこの大部分をクレイ・ペブルスに張らせることがベストなので、培地は最低でも10L〜20Lほど、と使用量が増えます。培養液は常時ドリップさせることはなく、一日の大半は、ポンプを止めた状態になります。それはクレイペブルスがほどよく湿っているタイミングで、根っこが培養液をたくさん吸収できるからです。苗が15cm以下の幼苗期では一日にたった1回〜2回15分間のドリップで十分です(ホントに)。

ところが、クレイペブルスを3L以下しか使わない循環式水耕栽培システムだと、常に培養液をドリップしなくてはならなくなるので、根っこの酸素量がすくなくなり、勝手においしく育つ感がうすくなるし、培養液と根っこが接触している時間が長いのでpH値もEC値も変化しやすくなります。


























次回からは、フラッド&ドレイン・システムや挿し木とり用クローンシステムの管理方法的なおハナシを予定してますが、







本日の最後に培養液管理の外せないポイントを・・・


  1. 水耕栽培システムの培養液には、水耕栽培専用の肥料を使います。でないと、微量要素不足を起こしやすくなります。

  2. ビギナーのガーデナーさんが培養液をつくる時、かならず水温を測ることからスタートします。同じ量の肥料を溶かしても、水温が高い時ほどEC値も高くなります。水道水18℃〜22℃の範囲内にしてから、肥料を加え、EC値を計り、最後にpH値を調整します。手で触って「水温は何度くらいだ」と分かってしまうようになるまで、なるべく水温を測ってください。

  3. ホビーの水耕栽培では、水道水を使います。井戸水など自然水は肥料の専門知識がない限り使用を避けます。日本の水道水は軟水なので、培養液のpH値は5.8スタートです。
    ちなみに、日本の水道水の塩素濃度くらいなら、肥料で中和されてしまうので気にする必要はありません。それでも「いやいや塩素は飛ばすのだ!」というおヒトは、エアレーションすると思うのですが、水道水をエアレーションするとpH値が自然に7.0以上に上昇します。それは自然なことです。

  4. 培養液を取りかえた翌日に、リザーバータンクのEC値とpH値を計ると、わずかにあがっているはずです。酸性の硝酸イオンをたくさん吸うとpH値が上昇するためで、どの植物においても生長期に起こり正常です。pH値が6.2以上になったら、pHダウン剤でpH値を5.8までさげます。その後、もう一度pH値が6.2以上になったら、培養液をすべて取りかえます。
    培養液のEC値が勝手にあがるのは、主に根からの老廃物のせいです。2週間以上EC値が下がったり変化しなくても、培養液の肥料バランスはメタメタに壊れてますので、必ず定期的にすべて交換します。
    培養液のpH値とEC値は、心配な場合は毎日計測してもOKですが、あまり神経質に調整する必要はありません。とくにpH値は、5.8〜6.2を一巡させることが最大のポイントです(とはいえ、pH値ぱ6.8くらいになるまでいつも放置してしまいますが生長トラブルが起きたことないので、ある程度のズレは大丈夫!と思ってOKです)。

  5. 栽培中は、培養液の水温にも注意します。冬はなるべくあたたかめ、夏はなるべく涼しく水温をコントロールすることがコツです。冬はサーモヒーターなどで培養液を加温し高くても24℃くらいまでとします(室温が寒すぎる場合は、もう少し高くしてもOKですが、ヒーターがダイレクトに根っこに触れる事態は避けます)。
    夏、培養液が30℃以上になると、植物は全力疾走している状態になります。お湯になるほど、水中に溶けていられる酸素量が減るうえ、根っこはエネルギーのすべてを酸素呼吸に費やしはじめます。リザーバータンク内にジェット水流をつくるか、アクアリウム用のチラーシステムを使います・・・または、真夏は潔くあきらめます。

  6. 培養液の管理ではありませんが、気温と湿度にも注意します。
    サボテンなど熱帯植物以外、ほとんどの植物がよく育つ環境とは、ガーデナーがそこにいても、心地よくストレスを感じない気温と湿度となります。
    だいたい20℃〜25℃がベストで、温度がか高くなるほど、湿度も高くする必要があり、25℃のときのベストな湿度は75%以上と言われていますが、換気や送風できない場合はカビ病が発生しやすくなるので注意します。
    一般的に植物は、挿し木、生長期までは高い湿度を好み60%〜80%あると根の生長が促進されます。開花期以降は、湿度でツボミがいじけやすくなるので、40%〜60%程度とし、湿度を下げた分だけ気温も高くなりすぎないように調整することがとても大切になります。

    この気温と湿度は、光があたっている葉面を計測するのがベストなのですが、それはむずかしいので、植物のトップの部分、もっとも光がよくあたっている位置の気温と湿度を計測します。


























以上、近ごろこのようなご質問を受けることが増えてきたので、まとめてお返事させていただきま〜す。

2014年5月7日水曜日

テントウムシのコンパとベリーな5月

今年も、ゴールデンウィークが終わりました。こうなると、あれよあれよと、梅雨がきて初夏がきて、真夏がきて・・・と、季節が飛ぶように移り変わっていく気がします。


3年ほど前にストロベリーポットに植えて以来、まったく植えかえもせず、たまに減ったココ培地を足すことくらいしかしていないアウトドア植えっぱなし栽培の「あかねっ娘」たち、収穫の時を迎えました。

与えている肥料といえば、有機液体肥料と有機活力剤などなどをお風呂の残り湯で薄めてたまに与えてるだけですが、イチゴたちはそれで大満足のようです。



























ラズベリーも、放置栽培しはじめてやっと「これでもか!」と実をつけてくれました。「今年はたまたまマグレで実がたくさんなった!」、とは商売がら言いたくはありませんので、一応言っておくと、花が咲いてからはチョクチョクと「PK肥料」を葉面散布してあげてました! イチゴやラズベリーは、バラ科のベリーです。

























「フルーベリー」の花です。おなじく「ベリー」とつきますが、ブルーベリーは「ツツジ」の仲間です。葉っぱを見ると、ツツジとよく似ていることに気がつきます。
受粉する前は、スズランのようなバルーン型の花が下を向いています。


















ブルーベリーの花が結実すると、このように雌しべだけが残り、ギュウウンッッッと上を向きはじめます。








































ちなみに、ブルーベリーの苗は、主に「挿し木苗」と「接ぎ木苗」の2種類が多く流通されてますが、「接ぎ木苗」の方が大きく育ち、圧倒的に収穫量が増えますが、そのかわりお値段が少しお高めです。「挿し木苗」は、お値段がお手ごろですが、丈があまり大きくなりません。それでも、季節の剪定時などに、切った枝からカンタンにたくさんの苗を増やすことができる手軽さが大きなメリットです。ブルーベリーは、ある日突然枯れくさったりするので、お気に入りの品種などには「挿し木苗」で増やしておくと便利で、それを丈夫な「ラビットアイ」系の品種に接ぎ木すれば確実・・・ということになりそうです。


今年はこのブルーベリーのポットに、まさに「うじゃうじゃ」と数えきれないほどのテントウムシの幼虫が住み着きました。エアロポットのケバケバ感が気に入ったようです。
現在は、サナギになったり羽化したりして、みんな思い思いの時を過ごしています。
























ガーデニング好きならば、知らないおヒトはあまりいないとは思いますが、これが「テントウムシ」の幼虫です。成虫よりもたくさんのアブラムシを補食してくれて、今ごろは道ばたに勝手に生えてる雑草バラ「ノイバラ」にアブラムシがたくさんいるので、ノイバラをシゲシゲと探していれば見つかると思います。



























「チョコレートの宇宙」という名前を持つ「チョコレート・コスモス」。今年は花のついていない苗から育てはじめて、やっと花が咲きました。水やりひかえめが好きな性質のようです。


























クレマチスを育ててるマダムならば、誰もが一度は口にせずにはいられないであろうダジャレ。「ちょっと待ってクレマチス!」



























さて、フラッド&ドレイン・システム「タイタン」で育つトマトたちは、もう収穫まっさかりな段階です。




























葉っぱをどんどん葉かきしているので、トマトの果房だけがゴロゴロと目立ちます。
最近のミニトマトたちは、フルーツのように甘くなってきたので、つまんでそのまま食べることができます。











































あかねっ娘が、どうも先祖帰りしはじめてしまったようなので、次回の室内栽培からイチゴの品種を変えることにしました。桃の風味がするイチゴ「桃薫」です。いま「桃薫」の苗たちからはランナーがニョキニョキでているので、秋まで手間ひまかけて子苗を一人前の大きな苗にしてきます・・・ということで、イチゴ栽培はほぼ一年間気が抜けないってことになるかと思います。農家の方はホントに大変ですね。





「桃」が死ぬほど好きなのですが、「果樹」をそだてる余裕はございませんっっっ。そこで、桃とイチゴがヒトツブで楽しめるこの品種にしました。