2014年5月30日金曜日

Flood & Drain System あるいは、Ebb & Flow

やっと晴れた! と思ったら、ウンザリするような蒸し暑さです。
こんな天気がつづくと、プランターには案の定キノコが立ちます。


























育てやすいとはいえないバラ「アンティークレース」は、いつもより多く花をつけました。雨に当たるとボタボタと花が落ちるので、突然のスコールが降りだすたびに、急いで軒先にとりこまなくてはなりません。洗濯物よりも優先されます。
ところでこのバラだけ、アリンコから異常に好かれます。



























冬のあいだ抜かずに放置しておいたら復活して花を咲かせた「ディアスキア」。毎年買い替える必要がないとわかって、うれしい発見となりました。




























消費するのを忘れて、今回もまんまと開花させてしまった「コリアンダー」は、最近話題のベルギービールのフレーバーとしても伝統的に活躍してきました。




























一方、やっと収穫までこぎ着けた固定種のニンジン「黒田五寸」です。これっぽっちですが、加熱せずにそのままポリポリ食べてしまっても甘くておいしいです。






















今朝ご近所のかたからいただきました。「アサツキ」の根っこです。「ゴハンがすすむよ〜」と、おっしゃってました。
昨年と同様に細かく刻んで味噌とあえていただきま〜す。
























・・・ということで、フラッド&ドレイン・システムについては、昨年秋から折に触れてご紹介しています。




























フラッド&ドレインとは、「Flood= 冠水する、と、Drain=排水する」


・・・というとおり、培養液を「冠水して排水」させて、植物たちに培養液を与える方法です。「Ebb & Flow」とも呼ばれています。


同じ培養液をくり返しフラッドさせるので、培地はクレイ・ペブルスを使います。ロックウール培地でもできないことはないですが、「ロックウールはクレイ・ペブルスよりも保水性が高く含気性が低い、くり返し同じ培養液をつかっていると肥料成分のバランスが少しずつ崩れる・・・」などなどの理由で、特に半年以上の長期栽培になる場合は、ベリーベストではありません。


↓苗がこんなに小さい時は、午前中にたった一回のフラッドだけでOKです(真夏は、2回必要かもしれません)。苗が大きく育つにつれフラッド回数を増やしていきます。下段のリザーバータンクから循環ポンプをつかって培養液を上段の栽培テーブルに汲み上げます。


















栽培テーブルは「Grow Table」とか「Grow Tray」などいろいろな呼び名があるので、栽培トレイとよぶこともあります。

深さが15cm程度の栽培テーブルが主流ですが、大きく育つ植物を一年以上育てると伸びた根っこがフラッド口やドレイン口をふさいでしまいトラブルが起こりやすくなるので、最近は20cm以上の深めのテーブルが多く、さらにバケツ自体を栽培テーブルのかわりするタイプも登場しています。

栽培テーブルの中央、またはもっとも低いところに「INLET(流入口)」と「OUTLET(排水口)」の2つをとりつけてあって、フラッドさせた培養液は栽培テーブルのどの位置まで溜めるのがベストなのかと言えば、培地の上部表面から1cm下までが限度です。水位は「OUTLET」側の高さで調節します。



↓リザーバータンクから培養液がどんどん汲み上げられ、ちょうど「OUTLET」側のスクリーンから排水がはじまった時の様子です。OUTLETから排水されはじめたタイミングで循環ポンプをとめてフラッドを終了させてしまうのがベストです。





















フラッド & ドレイン・システムは、しくみもパーツも思ったよりシンプルなので、設置がむずかしくなく、酸素が豊富になるので生長が早く病気にも強く、収穫も多くなることが最大のメリットです。
実際、今回のトマトたちは春を過ぎたころから「サビダニ」がでましたが、症状がすすむスピードがものすごく遅かったので、ほとんど気になりませんでした。根に酸素が触れていると免疫力が高くなることが、つくづく理解できました。


















「フラッド & ドレイン・システム」で、覚えておきたいこととは・・・

  1. 大粒タイプのクレイ・ペブルスを使います。これは、良くも悪くも保水性が低いことを理解しておく必要があります。
    保水性が低いクレイ・ペブルス培地は、発芽にはまったく向きません。しかし、挿し木とりには向いているので、挿し木から収穫までをワンシステムでおこなうことが可能です。とはいえ、エアロポニック・システムほど効率の良いクローンマシーンとは決して言えません。
  2. 品質確かなクレイ・ペブルス培地を選ぶ必要があります。ハイドロポニック用ではない「クレイ・ペブルスに似たエクステリア用砂利」などは、予想だにしない生長トラブルが起こりえるため論外です・・・

    というのも、なにか生長トラブルがおこると、肥料が原因だと思ってしまうガーデナーさんが少なからずいるのですが、よくよく話を聞くと、培地のチョイスに問題があったり、栽培システムに適した培地を選んでいなかったり、基本的な培養液の管理に思いちがいがあったりetc、ということがタクサンあります・・・というより、ゼンブそれです。

  3. 発芽、または挿し木の発根のステップでは、保水性の高いロックウールを使います。プロパゲータ(育苗専用システム)などで、3cmキューブほどのロックウールで発芽や発根をさせたら、5cm〜10cmキューブのロックウールへセットしてからフラッド & ドレイン・システムのクレイ・ペブルスに植えこみます。

    3cmほどのロックウールのまま、クレイペブルス培地に植えこんで、システムでの栽培をスタートさせてしまうと、保水性が少なすぎて根っこが思うように伸びません。「ちいさなロックウールのまま、もう植えこんでしまった!」という場合は、フラッド回数を増やすか、時おりハンドウォータリングで培養液をロックウールにかけてあげる、しかありませんが、酸素が少なくなるので、根ぐされや徒長、または手間がかかる、といったデメリットはあります。

  4. 欧米では、このタイプのシステムで、何年にもわたってパパイヤを育てている強者ガーデナーもいらっしゃいますが、長くても一年以内に栽培が終了する植物をチョイスしたほうが無難です。

    要するに、「手間を惜しまないのであれば、何だって栽培できるのです!!!」、が「手間が少なくて、収穫が豊富!!! というハイドロポニックスのメリットは一体どこへ??? 」という気持ちになるよね!!!! ということです。
  5. フラッドは、一回につき15分までが目安です。
    夜間は、基本的に昼よりも少ない回数のフラッドでOKですが、一日を通して3〜4時間に一回ごとのフラッドをする、という設定でも問題は起こりませんでした。

    ポンプを作動させる分数ですが、基本的には、栽培テーブルに培養液がくみあがっていき、ドレイン口から排水がはじまるまでの、たった2分〜4分ほどでOKです。
    たった数分間作動させるためには、デジタルタイマーがベストです。なかには、モーター機器と作動とせるとズレていくデジタルタイマーもあるので、対応しているものをチョイスしてください。


    循環ポンプの吐水量(揚程の高さ)は、栽培テーブルの高さまで揚水できればOKなので、大きすぎるポンプをそろえる必要はありません(・・・が、あくまで好みです)。

    フラッドが少なすぎると、もちろん生長が遅くなり、多すぎると、もちろん徒長しやすくなったり根が傷みやすくなります。この辺りの判断でフラッド回数や時間を決めることが大切なので、このシステムは、中級〜上級ガーデナーのほうが向いていると言われています。

    ※水が足りなくてしおれた場合は、茎ごと葉っぱもクタッとなりますが、根ぐされの場合は、葉っぱだけクタッとなって茎はピンッとしています。
  6. 一日のほとんどがドレイン・サイクルなので根っこには酸素が豊富にあります。リザーバータンク内にエアレーションをする必要はありませんが、そんな理由から、有機活力剤は、あまりたくさん使うことができません。活力剤をたくさん入れすぎると、オリなどがでやすくポンプやパーツが目詰まりしやすくなることがあります。

    また、培養液は1〜2週間ごとにすべて取りかえる必要があるので、培養液の使用量は多くなります。リザーバータンクは、最低でも栽培テーブル容量の1.5倍の容量が必要です。

  7. フラッド & ドレイン・システムでは、植物の根っこはダイレクトに空気に触れていられるので、イチゴやキュウリなど酸素要求量の多い果菜類の栽培も可能です。