2014年5月12日月曜日

水耕栽培。ちょっとしたこと、でも外せない基本など。

先週につづき、屋外栽培のイチゴたちが、収穫時期となりました。

「ダンゴムシにすら、見向きもされないなんて、どーセスッパイにきまってる!!!」と、なかばフテクされながら、イチバンに色づいたイチゴを食べてみると・・・
























「あはっ!!! あまい! あま〜!!! おいし〜!!!」酸味もほどよくあって、とってもおいしかったです。例年は、GW連休を留守にしたせいで、水切れを起こしてしまっていましたが、今年はお出かけできなかったせいで、水切れも起こさず順調に完熟を迎えられて大成功でした。といっても、屋外栽培のイチゴは寒い冬のあいだは一切花をつけないので、大きさも味もよいイチゴを収穫できるのは、春になってからほぼ一回だけになります。この後も初夏まで花は咲いて実をつけますが、気温が高くなるせいで粒が小さくなったり、あまりおいしくなかったり、虫たちに横取りされやすくなります。

また、春になってから花や果実がついたイチゴ苗をお店でGETしておウチで植えても、イチゴは花をつけると根の生長がほとんどストップしてしまい活着がおそいので、あんまりよい果実を収穫することはできません。「イチゴをホンキでおウチで育てて収穫したい!」という場合は、チューリップのように年が超す前に定植をすませ、冬のあいだじっくりと育て十分に根っこを伸ばしておいてから、無事春を迎え花をつけさせる、ということがもっとも大切だと思います。


























さて、花が咲くと根っこの生長の勢いが衰えるのは、ほぼすべての野菜、植物にも共通していることです。その理由は、花を咲かせるには、ものすごい体力を使うので根っこを伸ばすほうにエネルギーを使わないようになる、ってことが大きいと記憶しています。「花が咲くんなら、もうすぐ枯れるのね・・・」という植物の意識から、前向きな老化現象をはじめる、とも言えるのかもしれません。

言い換えれば、花が咲くまでに根っこがあんまり張れていなくても、ツボミがついてしまったら、そこからはもう「いい感じの優秀な株」に変身することは、ありえないと思っていい・・・ってことです。
なので、発芽や挿し木が発根したら、そこからの生長期には、肥料やけとか、高温ストレスとか、水切れとか、とにかく生長をストップさせてしまうトラブルを起こさないように注意して、日々日々、グングンと順調に生長させることが、ものすごく重要になるんですねぇ。
これは、ほぼすべての植物に共通することなのですが、生長期は、根っこが毎日伸びるしグビグビと培養液を吸収するので、養分水分で体内がパツパツと太り、葉っぱは「バンザイッッッ!!!」と言わんばかりに空を向くし、朝イチバンには、根っこから吸いすぎた水分が葉っぱのフチから葉つゆとして、出します。

その後、ツボミがつき、開花し、果実が実っていくと、根っこの生長が衰えるので、葉っぱのバンザイの角度は低くなっていき、葉つゆもあまり見なくなっていきます(プロのトマト農家サンなんかは、3段以上花房がついても、葉つゆを出すことができるそうです・・・つまり根っこの生長も促進させることができてるってことのようです)。




「植物は、根がすべて!!!」という、よく耳にするフレーズは、決して大げさではない、ということが言いたいわけですが、この根っこのメカニズムを理解することは、ある意味では「どの栽培システムが、自分にベストなのか?」を決める大きな指針となると思います。


ハッキリ言って、現在流通している欧米の水耕栽培システムは、どれも大合格です・・・そのシステムの使い方と、向いてること向いてないこと、をきちんと理解したうえで栽培をおこなえば失敗することなどありえない、と言えると思います。

なので、「どれがイチバン優秀な水耕栽培システムなのか? 」という評判よりも、どれがイチバン自分にピッタリなのか?  という視点で選ぶことがベストだと思います。

まず、一株栽培用の循環式水耕栽培システム「GEMINI」。リザーバータンクと一体型で、培養液の容量もだいたい10Lくらいです。
こういうスタンドアローン型の水耕栽培システムのメリットは、目が行き届くから失敗しにくく、よい苗が育てやすい=多収穫になりやすい、ということと、培養液の使用量が大量ではないので、肥料コストがあまり掛からない、のでホビーガーデニングや挿し木をとるために育てる「マザープラント」の管理に最適です。

























一方のデメリットは、「こういう一株用の栽培システムでは、まかり間違っても多種類の植物や大量の苗をいっせいに栽培してはなりません」ということです・・・

理由はもちろん「ひとつひとつのシステムの培養液管理をしなくてはならないので、丸一日世話で終わるわりに、目が行き届かないからトラブルが多発する」という、シンプルな理由です。10L程度の培養液は、pH値も肥料濃度(EC値)も変化しやすく、夏には水温が上がって酸欠になりやすくなるので、毎日毎日気が抜けません。

このようなスタンドアローン型システムをいくつも連結して、リザーバータンクからいっせいに培養液をドリップしたり、フラッドできないかぎりは「培養液管理」というものが、重たくガーデナーの肩にのしかかりつづけます。

連結タイプは、リザーバータンクに多量の培養液を使用するので、pH値やEC値の変動は少なくなるし、「培養液の水温がランプの熱でお湯になってしまう」、という最悪の事態も多少防ぐことができます。
が、連結型の賛否両論な部分というのは、培養液が複数のシステムを行き来するので、どれかが病気になると感染スピードが早く、全体がダメになりやすい、ということです。あと、培養液量がだいたい100L以上あれば、pH値やEC値の変動も多少押さえられますが、7日〜14日に一度は、必ずすべての培養液を交換しなくてはならないので、肥料代はかさむし、有機活力剤やちぎれた根っこでチューブやポンプが詰まったりするトラブルも起きやすいので、ココ培地など有機培地とくらべると、システム自体のチェックとメンテナンスが欠かせません。


また、循環式水耕栽培システムは、クレイ・ペブルス培地がベストです。

根っこの大部分をクレイ・ペブルスに張らせることがベストなので、培地は最低でも10L〜20Lほど、と使用量が増えます。培養液は常時ドリップさせることはなく、一日の大半は、ポンプを止めた状態になります。それはクレイペブルスがほどよく湿っているタイミングで、根っこが培養液をたくさん吸収できるからです。苗が15cm以下の幼苗期では一日にたった1回〜2回15分間のドリップで十分です(ホントに)。

ところが、クレイペブルスを3L以下しか使わない循環式水耕栽培システムだと、常に培養液をドリップしなくてはならなくなるので、根っこの酸素量がすくなくなり、勝手においしく育つ感がうすくなるし、培養液と根っこが接触している時間が長いのでpH値もEC値も変化しやすくなります。


























次回からは、フラッド&ドレイン・システムや挿し木とり用クローンシステムの管理方法的なおハナシを予定してますが、







本日の最後に培養液管理の外せないポイントを・・・


  1. 水耕栽培システムの培養液には、水耕栽培専用の肥料を使います。でないと、微量要素不足を起こしやすくなります。

  2. ビギナーのガーデナーさんが培養液をつくる時、かならず水温を測ることからスタートします。同じ量の肥料を溶かしても、水温が高い時ほどEC値も高くなります。水道水18℃〜22℃の範囲内にしてから、肥料を加え、EC値を計り、最後にpH値を調整します。手で触って「水温は何度くらいだ」と分かってしまうようになるまで、なるべく水温を測ってください。

  3. ホビーの水耕栽培では、水道水を使います。井戸水など自然水は肥料の専門知識がない限り使用を避けます。日本の水道水は軟水なので、培養液のpH値は5.8スタートです。
    ちなみに、日本の水道水の塩素濃度くらいなら、肥料で中和されてしまうので気にする必要はありません。それでも「いやいや塩素は飛ばすのだ!」というおヒトは、エアレーションすると思うのですが、水道水をエアレーションするとpH値が自然に7.0以上に上昇します。それは自然なことです。

  4. 培養液を取りかえた翌日に、リザーバータンクのEC値とpH値を計ると、わずかにあがっているはずです。酸性の硝酸イオンをたくさん吸うとpH値が上昇するためで、どの植物においても生長期に起こり正常です。pH値が6.2以上になったら、pHダウン剤でpH値を5.8までさげます。その後、もう一度pH値が6.2以上になったら、培養液をすべて取りかえます。
    培養液のEC値が勝手にあがるのは、主に根からの老廃物のせいです。2週間以上EC値が下がったり変化しなくても、培養液の肥料バランスはメタメタに壊れてますので、必ず定期的にすべて交換します。
    培養液のpH値とEC値は、心配な場合は毎日計測してもOKですが、あまり神経質に調整する必要はありません。とくにpH値は、5.8〜6.2を一巡させることが最大のポイントです(とはいえ、pH値ぱ6.8くらいになるまでいつも放置してしまいますが生長トラブルが起きたことないので、ある程度のズレは大丈夫!と思ってOKです)。

  5. 栽培中は、培養液の水温にも注意します。冬はなるべくあたたかめ、夏はなるべく涼しく水温をコントロールすることがコツです。冬はサーモヒーターなどで培養液を加温し高くても24℃くらいまでとします(室温が寒すぎる場合は、もう少し高くしてもOKですが、ヒーターがダイレクトに根っこに触れる事態は避けます)。
    夏、培養液が30℃以上になると、植物は全力疾走している状態になります。お湯になるほど、水中に溶けていられる酸素量が減るうえ、根っこはエネルギーのすべてを酸素呼吸に費やしはじめます。リザーバータンク内にジェット水流をつくるか、アクアリウム用のチラーシステムを使います・・・または、真夏は潔くあきらめます。

  6. 培養液の管理ではありませんが、気温と湿度にも注意します。
    サボテンなど熱帯植物以外、ほとんどの植物がよく育つ環境とは、ガーデナーがそこにいても、心地よくストレスを感じない気温と湿度となります。
    だいたい20℃〜25℃がベストで、温度がか高くなるほど、湿度も高くする必要があり、25℃のときのベストな湿度は75%以上と言われていますが、換気や送風できない場合はカビ病が発生しやすくなるので注意します。
    一般的に植物は、挿し木、生長期までは高い湿度を好み60%〜80%あると根の生長が促進されます。開花期以降は、湿度でツボミがいじけやすくなるので、40%〜60%程度とし、湿度を下げた分だけ気温も高くなりすぎないように調整することがとても大切になります。

    この気温と湿度は、光があたっている葉面を計測するのがベストなのですが、それはむずかしいので、植物のトップの部分、もっとも光がよくあたっている位置の気温と湿度を計測します。


























以上、近ごろこのようなご質問を受けることが増えてきたので、まとめてお返事させていただきま〜す。