2012年11月12日月曜日

ハイドロで起こる培養液の酸欠の恐怖!

TERRA培土のトマトたちは、咲いた花たちが次々と実っています。花たちは、勝手に咲いては勝手に実ってくれてます。受粉作業は、したことありません。(結実促進のホルモン剤もスプレーしたことありません。)














夏野菜たちは、せっかく待望の花を咲かせても、花を咲かせたり実るためのホルモンが不足していると、花が実らずポロッと落ちてしまったり、次の花がどんどん小さくなってしまい、大きな果実が穫れなくなってしまいます。
大きな花を咲かせたり、実らせたり、果実を大きくオイシくする方法はイロイロなテクがあるかと思いますが、大きなポイントとしては「チッ素過剰にしない」ってことは、大切だと思います。

ハイドロ用のベース肥料には、すべての必須肥料成分が、とっても吸収されやすい水溶性で配合されているので、普通だったら「チッ素だけ過剰になっちゃう」ってことは、あまりないと思われがちですが、実はわりと起こってます。

チッ素過多のせいで、花が実らず落ちてしまう原因には :

■培養液の水温やpH値が最適範囲からズレてる。
■光や炭素が不足して、デンプンが足りなくなってる。

ってこともありますが、

■根っこが酸欠になってる!

ってことも、割と起こってます・・・とくに、根っこがメイッパイ張ってきたときとか、NFTなどの列の最後などなど。





Sodapnoicsのトマトたちの培養液のpH値が、勝手に下がってくるようになりました。培養液のpH値が勝手に下がってくるようになったら、ベース肥料を Aqua VegaからAqua Floresにチェンジするタイミングです。














ということで、

【ハイドロで起こる培養液の酸欠の恐怖!】

についてですが、植物の根っこは、ワタシたちとおなじように「酸素呼吸」をしているので、培養液には、常に酸素がないとNGです。そして、一般的に水耕栽培の培養液には、溶存酸素量が8ppmあればGOODだね! って言われていて、培養液の肥料濃度が濃くなり水温が高くなるほど、メキメキと減ってしまいます。

↑このトマトたちを育ててるハイドロ・システムは、培養液を循環ポンプでくみ上げて再び根元にドリップする循環式システムです。培養液に溶けている酸素の量、つまり「溶存酸素量=Dissolve Oxygen」は、4.2ppmでした。



培養液の溶存酸素量をもうちょっと増やしたいな、と思いました。培養液の酸素量を増やすには、もっと大きな循環ポンプに取りかえるって方法もありますが、もっとカンタンな方法があります。
それは、単にタンク内の培養液の量を減らして、培養液が落ちる高低差を大きくするだけです。
ということで、11リットルのバケツのなかの培養液の量を8Lから5Lに減らしてみると・・・
溶けてる酸素の量は、1ppmくらいアップして5ppmほどになりました。

こんなアナログで地味な工夫が、積み重なって大きな結果につながっていくんだと思います。






(ちなみに、スプリンクラーで培養液をしぶき状にするエアロポニックス・システムでは、溶存酸素量は5.5ppmほどありました。エアロポニックスのほうが酸素量は多いようです。)

植物の根っこに必要な酸素量は、8ppmだとOKで、最低でも4〜5ppmはゼッタイ必要といわれてます。
ところが、培養液に溶けている酸素の量が1.5〜2.0ppm以下になると、まずリン酸とカリウムが吸えなくなり、吸収量がガクンッッッと落ちてしまいます。そしてその状態が長期間つづくようになると、今度はカルシウムとマグネシウムまで吸収できなくなってしまいます。

リン酸・カリウム・カルシウム・マグネシウムが不足すると、もちろんチッ素をアミノ酸やタンパク質へと同化できなくなって、チッ素が過剰になります。そのうえ、大きな花を次々に咲かせたり果実を実らせたりする植物ホルモンは、根っこでつくられてるので、根っこが酸欠になれば、もちろん植物ホルモンも足りなくなって花が落ちちゃったり、徒長しやすくなっちゃいます。




ということで、水の溶存酸素量を増やすには、まずバケツなどに汲んだ水を高いところから何度もバケツにうつしなおす・・・という手があります。

浄水器に通していない水道水をくんでおいて、4日ほどたった水です。水のなかには「花崗岩」や「備長炭」をいれて塩素を飛ばす工夫をしてます。この水の溶存酸素量は8.5ppmほどです。(水道水を汲んでおくと塩素は抜けますが、酸素も抜けてしまいます。)














この水を高いところからバケツにうつして、もどす・・・ということを2回ほどやって、溶存酸素量をふやしてみると9ppmになりました。これで、塩素が抜けて酸素はたっぷり、という理想的な水になりました。














水にベース肥料を溶かすと、溶存酸素量はあっというまに6ppmほどまで下がってしまいますが、培養液にしたあとに、バケツからバケツにうつしたり、噴霧器スプレーで高水圧で培養液タンクに注げば、溶存酸素量は7ppmほどまで上げられます。(ほんとアナログですが。)



ついでに、水道水の塩素=次亜塩素酸についてですが、植物にとって、塩素もいちお肥料なので、植物によっては、塩素不足というのも起きてきます。

ので、あまり神経質になりすぎなくてもいいとは思いますが、塩素を抜きたい場合は、水道水を汲んでおいて、4日目もすれば塩素は抜けてオルトトリジン液を入れても黄色くなりません。







このオルトトリジンを入れた水に、少しでも水道水を入れれば、あっというまに黄色になります。
(塩素が含まれていると、黄色に変色します。)

水道水を汲んでおいた場所が、せまかったり、無風だったりすると、塩素は抜けにくくなりますが、そんな場所でも、水にブクブクエアポンプを入れておくと塩素は抜けます。












あ〜と〜、培養液の酸欠が引き起こす、そら恐ろしい? 事態は、酸欠になると根っこが有機酸発酵しはじめてしまうので、培養液のpH値は、ドド〜ンッッッと酸性に傾きます。開花期の後半に培養液のpH値が4とかに下がってしまう原因には、これもあるので、pH値がどんどん下がってしまう時は培養液の酸素量を増やす努力も大切かなと思います。


また、水耕栽培では培養液にブクブクのエアポンプを入れると、pH値はちょこっと上がります(アルカリに傾きます)。

2012年11月6日火曜日

〜 室内栽培 〜 病害虫にも50℃温水マジック!?

いま、飲食店や奥様方のあいだで、とってもアリガタがられているのが、

「 50℃温水で野菜を洗う! 」

ですよね。
ちょっとシナびちゃった野菜でも、50℃のお湯に、だいたい2分つけておくとシャッキリ・パリパリによみがえるというウラワザ? です。

有名すぎるウラワザですのでバックリ説明すると、植物の気孔は水温50℃のときによく開き、それにつられて、養分と水分を吸収できる「クチクラ層」が、水分をさかんに吸収しはじめるので、しなびた野菜たちがパッツパツのパッリパリによみがえる! というものです・・・
もちろんワタシも日々やってます。おかげさまで「50℃のお湯」というものが、手でさわってだいたいわかるようになりました。



さて、ハナシはかわりまして・・・
去年から引きつづき室内栽培している、セレブなイチゴ「ももいちご」と同じ品種の「あかねっ娘」。

・・・ですが、今年はいまいち「育てるぞ!」てテンションがあがりません。


見た目は元気なんですが・・・













葉っぱをひっくり返してみると、

「ワタアブラムシ」が、ぎっっっしり!!!

このコたちは、ホントにしつこいんですよね〜。

ほっとくと、このコたちのオシッコに含まれる糖分を養分にするススカビ病が発生しやすくなります。









細胞を強化するカルシウムやケイ酸、はたまた「石けん+牛乳」などを葉うらにスプレーすると、多少減ったりもしますが、週末のたった一日だけでも加湿器の水を切らそうもんなら、アブラムシたちはそのスキにドドド〜ッッッと増えやがります。



農薬は使いたくないし「天敵農薬」はまだ届きません。イライラしながら、フト思い出しました。「今年の冬のニュースで、イチゴにお湯かけるといいって、いってたなぁ・・・」
バックリ調べてみると、50℃くらいのお湯を2分間、イチゴの葉っぱに散布すると、主にウドンコ病などのカビ病を激減できるそうです。

←大昔に壊れてしまったpHメーターです。pH値は、計れなくなってしまいましたが、水温はまだ測れるので、今は水温計がわりに使ってます。











ちなみにHANNAをはじめ、ほとんどのデジタルメーターは、熱湯につけるとイッパツで壊れるので、ゼッタイに熱湯には浸さないでください!!! ワタシは以前、熱湯でpH/ECメーターを壊して、泣いたことがあります。



ためしに、この50℃のお湯に、アブラムシだらけのイチゴの葉っぱを2分間ほど浸してみました。


すぐにプカプカとアブラムシたちが浮かんできました。











葉っぱのウラに必死にしがみついてるアブラムシが大半でしたが、手で軽くこすってみると、あっという間に葉っぱから離れていきます。これが通常の水温だと、手でこすったくらいではアブラムシたちは離れてくれません。











50℃のお湯に2分間ほど浸しながら指でアブラムシたちをこすり落としたあと、葉っぱを引き上げてみると・・・

ほぼ、いなくなりました!!!

いつもは水道水をジャージャー流しなからアブラムシたちをこすり落としてましたが、葉っぱが傷ついてしまう位までこすらないと、いなくなってくれなかったのです。









ワタアブラムシたちとの戦いに明け暮れ、ついに気力を失いかけていた日々に光が差し込みました!


ということで、53℃くらいのお湯を、アブラムシたちに噴霧スプレー攻撃してみることにしました。

アブラムシたちは、とくに出てきたばかりの柔らかな新芽がダイスキです。









葉うらにお湯をスプレーしながら、指で軽くこすってみると、いつもはガッシリとしがみついて離れないアブラムシたちが、次々に流れ落ちていきます。


これは快感!!!











アブラムシがビッッッッシリだった葉っぱも、お湯をスプレーししてみると・・・
アブラムシたちがいなくなって、こんなにスッキリ!

昨日から50℃温水スプレーを3度やってみましたが、葉っぱに高温障害は出ていません。
一説には、この温度の水を葉面にかけると、イチゴは抵抗力を自分でアップさせるんだそうです。











もちろんこのお湯スプレーだけで、すべての病害虫がゼロになるわけではありません。


それに、室内栽培の場合は、電気製品に水がかかってしまうと、ショートして火事や故障が起きてしまったりして危険だし、

葉っぱとちがって花は水濡れにとっても弱いので、花にかからないように気をつけないといけないし(イチゴの場合は、実った果実にお湯をスプレーしてウドンコ病を予防しているようです。)、

同じ箇所に2分間以上スプレーするのは、避けた方がいいと思います。

またグロウランプが消えたあと、湿度が高すぎると逆にカビの原因になってしまうので、グロウランプがついている間、きちんと換気したり、スプレーした後の苗にはファンで弱い風を当てて、早めに葉っぱが乾くようにするというケアは、ゼッタイ必要だと思います。




それでも今のところ50℃〜59℃のお湯を葉面にスプレーすると、ウドンコ病などカビ病を中心に、アブラムシやアザミウマ、ハダニの激減にも、一定の消毒と駆除効果があるそうです。(一説には54℃〜59℃のお湯)

薬剤を買いにいく時間がないけど、「 目の前のカビ病やアブラムシにアザミウマにハダニを、いますぐ、たったいま、お金をかけずに、なんとか激減させたい!  だって、ものすごくイライラする!!! 」という場つなぎ的な病害中対策には、とってもベストなのではないでしょうか???



ひとまず、まだまだ実験段階なので、もしも早々とトライされてみたいおヒトは、自己責任でドーゾ!  また、室内の湿度管理を怠ると、またたくまに病害虫は広がります!

2012年11月1日木曜日

室内栽培〜開花前期の管理〜

さて、今日から11月です。
近ごろは手や髪のパサパサ感が気になってきました。空気が乾燥してきているんですねぇ〜。適度な保湿は、レディースの美容にもメンズの健康にもプラントの生長にも、とっても大切で〜す。


蛍光灯からMHランプ400Wに変えてから、約一週間経ちました。TERRA培土で育てているトマトたちは、どれも一段目のツボミがついたり、花が咲きはじめました。

最近のグロウルームの気温は18℃〜22℃くらいで、MHランプがつくと22℃〜24℃くらいに上がります。

ランプがついた後も、植物にとって最適温度範囲内でおさまるならば、MHランプやHPSランプの高い光量は、トマトたちの生長にとって強い味方です。









気温がちょうどよくなった反面、湿度がどんどん下がってしまうので、超音波式加湿器で湿度を40%〜60%ほどにキープしてます。
適度な温度と湿度がある季節や空間では、ヒトが呼吸しやすかったり、肌や髪がしっとりして気持ちいいな、と感じると思いますが、植物も同じです。


適度な温度/湿度は、植物が開花していく時期に、とっても大切になります。なにしろ開花には体力を消耗するし、ストレスが溜まるからです。






湿度を高くすると「カビ病」が出るんじゃないかと心配するおヒトもいますが、湿度を60%くらいで管理していて、カビ病が出たことがありません。イチゴはアブラムシのせいでススカビが出たくらいで、湿度管理をするようになってからというもの、ウドンコ病は出たことがありません。(ファンなどで、換気や空気の動きは、もちろんつくっています。)

多湿にすると、カビ病が出やすくなるといわれる温度は、だいたい25℃以上といわれています。それでも湿度がしっかりあれば、カルシウムやケイ酸などの、プラントをタフにする肥料が吸えるのでウドンコ病なんかも、ちょっとやそっとじゃ出にくくなります。


Sodaponicsの水耕システムで育てているトマトの根元です。タンク内の循環ポンプで培養液をまわして、その途中でCO2ガスを培養液に直接吹き込んでいます。











ランプか点灯している間だけ、1時間毎に10分間だけ、CO2ガスが入るようになっていて、吹き込んだ直後はpH値が5.0ほどに下がり、1時間後には6.2まで上がります。

Sodaponicsのトマトたちは、幼苗のころ培養液から漏れるCO2ガスで、根元の葉っぱが焼けちゃったりもしてましたが、生長がドンドン早くなってます・・・






とはいえ実験の結果というものは、ヒトの思い込みに大きく左右されるとも聞きます。
Sodaponicsの pros and cons については、ノンビリと楽しみながらオオマジメに追求していこうと思います。なにしろホビーですから「これはスゴそうだな! おもしろいな!」と感じたことを最優先にしてます。ヤラしい欲を出したとたんに、殺伐とした気持ちになっちまって、つまらなくなるに決まってます・・・と思います。



ところでCOCO培地やTERRA培土と違い、水耕栽培の場合は、日々培養液のpH値を計ったり、時には培養液のpH値を調整する手間がいります。

しかし、CANNA AQUAベース肥料を循環式ハイドロシステムで使うと、生長期用ベース肥料 AQUA Vega でくつった培養液は、pH値6.2までしか上昇しないようにできてます。(CANNA AQUAだけの特徴です。) 

なので培養液のpH値調整は、つくったときだけpH値を5.8にしたら、あとはpH調整はいりません。(軟水でつくた培養液はpH値5.8スタートで、硬水はpH値を5.2スタートにします。) ただし1〜2週間に一度は、培養液をゼンブ交換してください。

しかし突然に、培養液のpH値が6.2よりも自然に下がりはじめたら、植物たちは開花用の肥料バランスを欲しがっているサインです。これがAQUQ VEGAから開花期用ベース肥料 AQUA Flores へチェンジするタイミングです。

例えば、2パートや3パートに分かれているベース肥料を使ってる場合でも、生長期中に培養液のpH値が、いつもより上昇しなくなった時、開花期用の肥料レシピへとチェンジすればいいと思います


pH値が上がらなくなる理由は、生長期から開花期へ移るとき、硝酸イオンなど酸性の肥料よりも、カリウムなどアルカリ性の肥料を欲しがるからです。なので開花期へ移り変わるとき、培養液のpH値がちょっと下がります。





さて、COCO培地のトマトたちです。

今年のCOCO培地のトマトたちは、ちょっと生長がノンビリ気味です。2号ポットから5号ポットへの植えかえが遅すぎたせいです。

かといって、あせって水やりしたり、培養液を突然濃くしたりはしないようにしてます。






5号鉢に植えかえてから、「待ってました!!!」とばかりに、ポット内にはゲンキな根っこがビシビシ張ってきました。一番花のツボミがついたら、6Lのポットに定植していく予定です。
















CO2の濃度は、Sodaponicsシステムから漏れるガスだけで550〜700ppmほどでキープできてます。(たまにワタシの息もカウントされます。ヒトの息だけで、瞬間的に800ppmくらいまでなりますよね。)コストや手間、収穫量の差し引きを長い目で見れば、このくらいのCO2濃度がイチバン安全で効果的だと思います。











今年のあかねっ娘、すでに「アブラムシ牧場」です。

イチゴだけは、無農薬栽培に限界を感じます。

しかし、もうすぐカワイイ天然農薬が届く予定です。

へへへ・・・今に見てろ! アブラムシ!!!










イチゴは短日植物ですが、低温に当てるとさらに開花が促進されます。なので、イチゴたちのグロウランプは、まだ蛍光灯です。















ちなみに、オランダのトマト施設栽培のデータによれば、「本来、光周性がないといわれてる中性植物のトマトも、ランプ照明のサイクルを12時間/12時間の短日にすると、収穫量が増大する」という結果が出てます。














2012年10月29日月曜日

秋の味覚とホップの育ちかた

アメリカセンダングサの花の蜜を忙しそうに集めているミツバチたち。このコたちの甲斐甲斐しい受粉作業のおかげで、秋から冬のあいだ、ワンコたちや子どもたちが、あのメンドウなセンダンクザのタネを体中にビッシリひっつけて帰宅する羽目になります。
























いよいよ、いよいよ、いよいよ、いよいよ、ミカンたちが色づいてきました。
フライング気味に2つほど、味見してみました。

それはそれはそれはそれは、サワヤカな風味があって、それでいてシッカリ甘みが乗ってて、ウマかったです。




























「味わう」といえば、もうひとつ。クラフトビア「ムーンライト」さんから、先日お持ちしたホップたちで仕込んだ「フレッシュ・ホップ・エールが、でけました!!!」という、それはそれはウレシいお知らせを頂きました。





















ウチのカスケードホップで仕込んでくださった「フレッシュ・ホップ・エール」。日本では、なかなか味わえない希少価値の高いクラフトビールです。(今日現在で、たぶん完売してるそうです。)























摘みたてのホップの香りがほのかに漂い、上品な味でした。半分くらいまで飲んだところでグラスのなかの香りをかいでみたら、まさしくカスケードのアロマでした。


















来年は香りをさらに引きだせるよう、トライしたいと思いました。
このビールに使っていただいたホップたちの苗ですが、そろそろ今年3度目の収穫時期がきています。

ホップは、肥料食いです。まだ小さな苗のうちは、根っこがしっかり張りめぐるまでは水控えめで管理しないと、根グサレしやすくなりダメになってしまいがちです。

























しかし、根っこがしっかり張って、毛花が咲き始めたら、水と肥料を切らさないように管理して、こまめにこまめに目を配ると、ホップたちはミゴトに応えてくれます。

ホビーのホップ栽培ならば、あまり難しく考えずに、「ホップの花の伸び具合を毎日見てあげて、毬花がスクスクと大きくならなくなってきたら、肥料と水をタップリとあげる。」って感じで全然OKだと思います。



しかし、ホップ栽培は、プロの農家さんたちの足下にも及ばないので「こう管理すればOK!」などと抜かすつもりはサラサラないのですが、それでも「ホップは、ゼッタイ地植えがいい!!!」と思います。そして「ホップは、2年目、3年目からが本番!!!」だと思います。なので、今年ホップのグリーンカーテンにトライしたおヒトのなかで、収穫がイマイチだった場合は、もう一年そのままにしておいてあげたらいいと思います。
























ホップに限らず、ほとんどの植物は「根の量が、花の数、収穫量に比例」します。その上、ホップなどのツル性植物は水耕栽培やプランター栽培にあまり向いていないと感じています。その理由はハイドロ・システムやプランターで、いままで何度となくホップの栽培にトライしてきましたが「なんだか不調!」な育ち方しかしなかったからです。

その昔は、日本の在来種的なホップの苗を買って、半年以上ず〜っっっとポット植えにして肥料も水も光もしっかりあげてましたが、ウンともスンとも大きくならないので、ある秋に「もう飽きた! 枯れてもいいや!」という気持ちで、庭にテキトーに植えかえてしまいました。
←そしたら次の春、タコのような図太い根っこがビシビシと走り出し、我が家のリッパなグリーンカーテンになりました。ほったらかしの植えっぱなしだったのに、それから3年間ミゴトなグリーンカーテンになってくれていました。

ところが日当りが悪かったので、ツルはよく伸びましたが花はあまり咲かなかったのです。






そんなハイドロ嫌いで、プランター嫌いなホップですが、挿し木の時だけはそうでもないようです。

去年センテニアル・ホップの挿し木を取った時の様子です。



















「エアロポニックス」というスプリンクラーで培養液を供給する水耕栽培システムで挿し木とりをしました。
「さあ、挿し木をとろう!!!」






















1週間ほどで、あっとうまに発根しました。














発根したホップの挿し木たちをブクブク式水耕システムで冬になるまで育ててみました。

液体肥料と活力剤の栄養タップリな培養液を使いました。










挿し木の発根から3ヶ月ほどで、これだけ根っこが伸びました。














この後、真冬になったらやさしく地植えにしました。
ハイドロ栽培から地植えは、根っこの気持ちを思えば本来ご法度ですが、春までの数ヶ月でリカバリーできるし、冷たい土のなかのほうが根っこは休眠しつつ、糖分やミネラルをシッカリため込んで、太くなってくれるのでOKみたいです。















このやり方ならば、挿し木のホップの茎が半年ほどで2cmほどまで太れるので、日当りがいい場所に地植えすれば、ホップの根茎(リゾーム)からスタートさせた苗と同じくらい、植えて一年目からでも、なかなかの収穫が楽しめると思います。






2012年10月25日木曜日

秋の室内栽培、MHランプへチェンジ!

いよいよ秋本番です。風が冷たい日には、冬の気配すら感じます。夏の間、あんなにギラギラして暑苦しかった太陽の日射しも、ありがたく感じる季節となりました。














朝の気温が20℃を下回ることも珍しくなくなってきました。

蛍光灯のグロウランプから、夏野菜を秋に本気で育てることができるMHランプ400Wにチェンジしました。













ランプ真下の明るさは、20cm〜30cmの位置でずいぶんと光量が変わります。MHランプ400Wでは、ランプから30cm真下で光量が33,000Luxほどで、ランプの真下20cmの位置で60,000Luxほどになります。なので、生長期の苗はランプの真下では30cm以上近づけない方が無難です。


トマトをはじめ、スイカやメロンなど強光を好む夏野菜は、最高60,000Luxほどの光量が必要です。もしも太陽光がゼロならば、蛍光灯やLEDでは生長期まではOKですが、花が咲いてからは、満足のいく収穫は難しいかもしれません。MHランプやHPSランプ(高圧ナトリウム灯)ならば、かなり満足のいく収穫が楽しめます。



20,000Lux〜40,000Luxほどの中光を好む野菜は、キュウリ、ナス、ピーマン、そしてイチゴなどがあります。MH、HPSランプなら50cm〜30cmほど離せばOKです。また、窓辺やベランダなどで自然光が確保できるなら、蛍光灯やLEDとの併用で収穫までイケルと思います。



そして、弱光を好むレタス、ミツバなど葉ものハーブ類ならば、花を咲かせなくていい収穫なので、太陽光ゼロでも蛍光灯やLEDだけで収穫まで楽しめます。





そして、太陽光ゼロ、HPSランプだけで強光性野菜を育てたい場合、

1㎡(1mX1m)スクエアで400W必要

といわれます。
このグロウルーム「DR240Ⅱ」のグロウスペースは2.4mX1.2m=2.88㎡なので、計算上では、高圧ナトリウムランプ600Wが2ついるよ・・・ということになるのですが、単純に光量だけの都合なので、気温・湿度・苗のコンディション・・・などなど、植物の身になって考えてみれば、「そんなにいらんだろう!」という状況の方が圧倒的に多いです。

DR240Ⅱには、最終的には400Wを2つ点灯する予定です。(実際、去年のトマト6株も400Wひとつで、ウマウマなのがたくさん穫れました。が、葉かきなどの回数を増やして、なんとか光を確保した・・・といった感じでしたが、コマメに面倒を見れるならば、これでなんとか足ります。)


9月中旬に発芽したトマトたちでしたが・・・

約6週目でTERRA培土のトマトたちにツボミがでてきました。
トマトの種を撒いてからというもの、スーパーでトマトを買う気が、一切起こりません。

とはいうものの、日々のゴハンづくりにトマトがないというのは、なかなかツライので「はやくトマトが穫れるようにならないかな〜・・・」と心待ちにしています。








最後に、植物の光合成の仕組みについて、忘れっぽいワタシ自身のために、ツラツラとメモっておこうと思います。




植物の光合成運動には、「明反応」と「暗反応」の2種類があります。

「明反応」とは、「光」から「ATP」という燃料と「NADH」という還元酵素をつくりだす反応です。ばっくり言ってしまえば、「明反応」は温度に影響されないので、光が強くてCO2の量が多いほどATPとNADHをいっぱい作れるってことになります。

この「明反応」に有効な光ってのが、耳にタコができるほどよく聞く「 赤色光と青色光 」です。これらの明反応に都合のよい光の波長を、「Phyto-Lumen=光合成効率の良い波長」ともいいます。


赤色光は、エネルギーこそ低い波長ですが、葉緑素が100%吸収できる効率のよい波長で夕方に強くなる光の波長です。一方、朝につよくなる青色光は、エネルギーが高くて葉緑素が100%吸収できる波長ですが、いかんせん、紫外線のとなりの波長が短い光なので、エネルギーが強すぎて、せっかく吸収したあとに、あまった青色光のエネルギーをペペッと吐き出しちゃうってことが起きてたりします。

(ところが、ムダだといわれてる緑色の光でもホントは光合成できるし、紫外線にはホルモンの分泌効果や発芽を促進する効果なんかもあるので、健康でオイシい野菜を育てたいなら、すべての色の光を放射する太陽光か、太陽光に近い波長を出すランプがベスト! かな?と思います。)


もひとつの「暗反応」は、「ルビスコ」というCO2を固定する酵素が「明反応」でできた還元酵素をつかって、CO2を糖・デンプンに作りかえる反応で「暗反応=炭素同化」ともいわれたりするんだそうです。一般的に酵素は温度が高い方がよく働くので、この「暗反応」は30℃ほどをピークに温度が高いほど反応が早くなるんだそうです。ただし、光量とCO2どちらかが足りないだけで、CO2を糖へと作る効率はググ〜ッとおちます。

「暗反応」でつくる「糖・デンプン」は、植物の健康・生長の早さ・花芽の多さ・果実のウマさ、そして収穫量、これらすべてを左右します。

「じゃあやっぱり、光量とCO2と温度が高い方がいいんじゃん!」とワタシは一瞬思ってしまいましたが、実は光量が強くなるほど、そして温度が高いほど、光ストレスのせいで光合成と呼吸につかうエネルギーと酵素をたくさん使ってしまううえ、光合成をストップさせるので、エネルギーの差し引きは、すこしマイナスになって、そのうえ生長に使えるエネルギーが減るし、葉緑素もダメージを受けます。


ちなみに、オランダの施設栽培には「1%ルール」というものがあって、「光が1%増えると収穫量も1%増える。逆に光が1%減ると収穫量も1%減る」という内容です。

ということで、結論としては、グロウルームやグロウランプをお持ちのガーデナーならば、最適な温度/CO2濃度/湿度/水分/肥料の管理は、モチベーション次第で、かなりパーフェクトに管理できると思うので、オランダの施設栽培が追求するロジカルな栽培技術を駆使して、それはそれはファビュラスなお値段がするシロガネーゼ、ニコタマダムなベジタブルをつくるのも夢じゃないってことです。
好きなものを贅沢に追求できるのが、ホビーのよさですから・・・

2012年10月19日金曜日

室内栽培〜生長期の管理その2〜

 昨日につづき、室内栽培での生長期の様子の紹介です。


・・・のまえに、昨日の植えかえ(植え増し)での補足です。

大きなポットで同じ培地に植えかえる場合、根元を崩さないようにして植え込むので、根がダメージを受けることはないため、光を弱くしたりというケアは基本的には必要ありません。しかし万が一、植えかえの時に、根っこがひどくチギレてしまったり、今までのポットの底から根っこがたくさんハミダしすぎててカットせざるを得ないような場合は、植えかえた後に苗がクタッ・・・となってしまうかもしれません。そんなときは、もちろん光を弱くして湿度を高めにしてあげて、根っこの回復を助けてあげる必要があります。


そして、もしも植えかえてから半日以上様子を見られない場合も、ねんのため光を弱くしたりランプを遠ざけておいたほうが無難です。



植物の栽培になじんでないおヒトは「根っこって、そんなに大事なの?」と、感じるかもしれません。「根っこ」をニンゲンに例えると、「根は、腸と皮膚」です。活発な皮膚や腸は生きるために必要な水分や養分、酸素を吸収たり病害菌に対してバリアを張って身体をゲンキに保ってくれますが、皮膚や腸の細胞が老化して死んじゃえば「垢/アカ」となって、はがれ落ちていきます。

なので、黒く枯死した根っこは「アカ」なので、ちぎってもプラントにダメージはないし、むしろ新しい細胞が活性化しますが、生きてる「皮膚や腸」をキズつければ、栄養も吸えなくなるし病原菌も入り込みやすくなるし、イロイロとつらいよね、ってことです。



ちなみに、TERRA培土への植え増し時の水やりには、ベース肥料はいりません、根っこの活力剤の希釈培養液でOKです。

しかしCOCO培地には、肥料が入ってないのでベース肥料と根っこの活力剤を希釈した培養液を水やりします。(CANNA COCOベース肥料A/Bならば、水1Lに対してA/B各2mlづつのレシピでOKです。)
ちなみに、これはすべてのココヤシ培地には当てはまりません。じゅうぶんに洗い流してない(チープな?)ココヤシ培地だと、根っこが焼けてしまうことがあります。





・・・さて、いまは、蛍光灯タイプのグロウランプでトマトとイチゴたちを育てています。室温が24℃を下回るようになってきた最近では、安心してランプを苗のトップに近づけられます。














ここまで近づけると苗のトップ部分で、だいたい20,000ルクスほどの光量がありますが・・・















蛍光灯にしても、MHランプにしても、HPSランプにしても、ランプってのは苗に近づければ近づけるほど、どうしても照射範囲が狭くなってしまうので背の高いプラントのトップにしか満足な光があたらなくなります。

このように、ランプの真下にあるトマトだけスクスクと伸びるようになってきました。光があたる様子を遠目で見ると、はじっこのトマトたちには弱い光しかあたってないことがよくわかります。苗の生長の様子から見て、そろそろ本格的にHPSのグロウランプへチェンジする時期だと思います。















ち・な・み・に・・・

植物は、葉の部分的にしか強い光があたらない「スポット照射」が、大の苦手です。たとえ光量がすこし弱くなっても、プラント全体に平均的な光があたるフラット照射を好みます。

例えば、MHやHPSランプを植物の栽培に使う場合、ランプをタテに照らすスポット照射の方が部分的には光が強いのですが、とても狭い範囲に強い光に集中してしまうので、植物の葉が「光ストレス」を起こしてしまい、強すぎる光のせいで活性酸素が発生して葉緑素の劣化がはやまり、光合成の効率が悪くなるからです。



なのでタテに照らす場合、このようなスポット照射を防ぐために、苗からMH/HPSランプの位置を遠く離すことになりますが、そうなると光が弱くなるのでランプの数をふやさねばならない羽目になります。となると、ランプの数が増えた分、空調コストも温度もグングン上昇するはめになり・・・屋根がとっても高い植物園や、設備コストがかけられる施設栽培、ショールーム的な場所むけのランプ設置方法だと思います。





ということで、欧米では植物栽培としてのMHやHPSランプが、タテではなくヨコに照らす水平照射がスタンダードになってるのは、経験的にそっちのほうがトータルで見て収穫率や効率がいいと理解してるからです。なにしろ、植物の生長ってのは、光の強さ、波長やワット数だけで決まるような単純なものではなく、肥料、温度、湿度、酸素に炭酸ガス、そして水etc・・・という環境要因が、光と同じく重要です。なによりも、植物は生き物なので、栽培設備だけで満足せず、植物が何を言いたいのか察してあげる想像力・・・は大切だと思ってます。










ハイドロ・システムのトマトの葉に「水泡症」がでてきました。TERRA培土とCOCO培地の同品種のトマトたちには、でてません。「水泡症」は病害虫の被害ではなく、光が弱いときにトマトの葉にでる生理障害だそうです。やっぱりHPSランプヘチェンジする時がきているようです。















「水泡症」の葉っぱをちぎって、置いておいたら、水泡がすべて消え去りました。














・・・ということで、やっぱりいつなんどきでも、マニュアルや数値だけを重要視せず、ガーデナー自身の目で見て「これでイケそうだ! このままいこう!」「こりゃ、いかん! もしかして、これが原因か?」を判断することが鉄則かなぁと思います。