さて、「園芸は、国家繁栄のバロメーター」の言葉のとおり、思い起こせば80年代のバブルのあたりから、本格的にガーデニングブームが続いているニッポンですが、目にうつくしく映るガーデニングは、気力・体力・知力、そして財力が要求される趣味でもあります。
一方、超高齢化社会をむかえるニッポンでは、ご高齢の方にとって手入れしきれない「植栽」が、大きな負担となりつつあることも事実です。土だけになったプラ鉢がたくさん積み重ねられていたり、外構のコニファーの葉が枯れ込んで幹だけになってしまったり、目かくしに植えた生垣が生い茂りすぎて、重たく見えてしまったり・・・
すでに土だけになってしまっている重くて大きな植木鉢は歩行のジャマだし、つまずいて怪我の原因となります。 剪定されていない生垣は、視界がさえぎられ空き巣に狙われる原因となってしまいますが、ご高齢の方がそれらをサクッと解決することは、とても大変です。
首都圏のベッドタウンでは、オトナリどうし、玄関と掃き出し窓が向かい合わせ、ということは珍しくありません。お互いのプライバシーを保つために、境界線に大きな物置や高い塀を設置してしまうよりも、緑の目隠しをしつらえる方が文化的に感じます。
しかし、バラや果樹のような害虫がつきやすく、薬剤や手入れがひんぱんに必要な植物は、ご高齢の方にとって重労働なうえ、ご近所トラブルの火種となってしまいます。ハナミズキなどの落葉樹も、落ち葉ひろいが大変です。なによりも建て込んだ住宅地では、あまり日当たりもよくないので、植えられる植物の種類は限定されてしまいます。かといって手入れがあまりいらない常緑系の低木だらけでは、味気もありません。
「 耐陰性が高く丈夫な常緑性植物、水やりや肥料もあまりいらず、生長が遅いから剪定もほとんど必要ない。葉っぱが生い茂らないのに、きちんと視線はさえぎることができる。」
このことを念頭に「あれは枯れるな、これなら多分枯れないですむ」と、脳内で植物の選別をしてみました。さまざまざまな植物どもを枯れ殺してきてしまった私の苦い経験が、こんなときに活かせる時がきました。
それが「シャドウ・ガーデン」と「ドライ・ガーデン」です!
「シャドウ・ガーデン」は、耐陰性が高く手間がかからない植物をセレクトしました。
オトナリ様の掃き出し窓との境界線には、常緑で耐陰性が高く、しかも低木性のジンチョウゲとスキミアを植えました。ジンチョウゲは、日当たりが悪くても明るく見えるように、黄色い覆輪(ふくりん)が入る品種にしました。 雑草抑制のためのマルチングには、明るい緑色をした山苔を使いました。こういう半日陰の場所では、せっせと霧吹きをしなくても、苔の美しさを長く保つことができます。端っこに植えたヒューケラやタマシダは、根づまりしない限りどんどん広がるので、ゆくゆくどれかが枯れてしまっても、あっという間に欠株スペースをカバーしてくれます。
花の種類が最も少なくなるこの時期に、まっさきに咲いてくれる「ロウバイ」は、低木性で丈夫です。住民のリクエストで植えました。
不思議と昭和風の「シャドウ・ガーデン」とも違和感のない「ドライ・ガーデン」は、乾燥地帯で育つユッカやネイティブ・プランツなど、葉の形や色が美しく寿命が長い、ワサワサと生い茂ったりせずに目隠しになる。さらに、真夏でも水やりが忙しくならず、肥料や剪定もあまり必要としない上に、耐寒性もあって屋外でも育つ植物どもをセレクトしました。 乾燥に強いだけでなく、ある程度の耐陰性もありながら、カラフルな葉色が暗くなりがちなエリアを明るくしてくれます。木本植物ばかりなので、植えっぱなしでOKというところも高齢者向き!
難分解性繊維で多孔質のココチップを表土にマルチングすると明るくなるうえに、カリウム補給にもなるし、有用菌も住みつきやすい資材です。
もともとあった植木は抜かずに移動させ、新たに何種類かを植えたし、使っていない植木鉢をすべて撤収して、花壇まわりのスペースを広くしました。
大きくてスタイリッシュなプランターは、土でいっぱいにしてしまうと重たすぎて動かせなくなってしまいます。10号くらいの軽くて大きなプラ鉢で底上げするか、アク抜きベラボン(ココハスクのチップ)など軽いものを半分つめてしまい、その上に鉢植えの植物をポンと置いてしまえばイージー・イージー!!! 表土を苔やバークチップなどでおおえば、それらしく見えてしまう手軽さ!
撮影できませんでしたが、仕上げに、ランニングコストがほぼゼロのソーラーガーデンライトを植栽の間にセットしました。空き巣被害が多い日没直後に、点灯しはじめるので防犯対策にもなります。