2011年11月8日火曜日

室内栽培のミニトマトと葉っぱの老化

室内栽培の秋冬トマトたちは、スクスク育ちすぎて、グロウルームのジャングル度がかなりすすんできてしまいました。
根元のほうの葉っぱには、光があまりあたりません。

上の葉っぱの陰になって、光があたらない葉っぱや、新芽からひろがって間もない幼い葉っぱは、光合成運動が少なくて、もっぱらほかの葉っぱがつくったデンプン(糖分)をもらってばかりのパラサイト的な存在です。







トマトに限らず、野菜や果物など栽培期間の長い作物は、花が咲きすすんできた頃からは、みのった果実を大きくオイシくするために、根元の方の老化が進んだ葉っぱをとってしまう「葉かき」というケアが大切だそうです。



・・・が、「過ぎたるは、及ばざるがごとし」という、スンバラしい名言があるように、よく働く葉っぱを見分けるノウハウもないままに、やたら葉っぱを切り除いてしまうのは、もちろんメガトン級のNGデス。
詳しくは、「はたらく葉っぱ、はたらかない葉っぱ」でどうぞ。














葉かきしたほうがいいくらいまで葉の老化が進む速さは、植物によって数十日から一年ほど・・・とずいぶんと差がありますが、トマトやキュウリ、イチゴなどの果菜類の葉っぱが老化するのは、だいたい30日くらいかな? と感じます。

が、葉っぱは貴重なデンプンをつくる工場なので、つまりは収穫量にもダイレクトに影響します。まずは光が、むらなく葉っぱにあたるように誘引して「葉面積指数」をよくしてあげたうえで、葉の老化が遅いプラントの方が、光合成運動が多くなってデンプンが足りるので、徒長せずガッチリ丈夫に育ちます。

で、葉の老化を防ぐのが、まずは適度な湿度60%前後をキープが最大条件です。(生長期は60%〜80%と高めがベストで、花が咲いてる時は、湿度が高すぎると結実しなくなったり花が傷んだりしちゃうので50〜60%以下にします。60%ほどの湿度があれば、葉っぱの気孔が閉じないので、根もよく動いて肥料と水をたくさん吸います。もしも湿度が30%とか低すぎると、CO2を入れていてもほとんど吸ってないので、かならず湿度を気にした方がいいです。)

そして、「サイトカイニン」という植物ホルモンが、葉っぱの老化を防いでくれるんです。

サイトカイニンは、細胞分裂もさかんにするので、花芽が増えたり果実が大きくなったり・・・と収穫量がふやせるメリット盛りだくさんですが、この「サイトカイニン」は、生まれたての根っこの先っぽ「根端=こんたん」でたくさん作られるそうなので、肥料過剰で根っこが傷んだり、冷たい培養液で根っこの根毛が消えたり傷んだりすると、根端ではサイトカイニンが作られにくくなって、花芽も収穫量も少なくなる・・・という恐るべき結末が、待ちうけることになります。やっぱり根っこは大事です。














ちなみに、植物が根っこを伸ばしたり、茎を伸ばしたり、花を咲かせる命令をするのは、「肥料」じゃあなくって、あくまでも「植物ホルモン」です。
肥料や水分・水素に酸素や炭素、そして日光さえ、植物の生長をダイレクトにコントロールできる作用はなくて、生きてくための不可欠な要素という役割だけです。植物は「必須成分のナニに、どれだけ、現在ありつけているのか?」から判断して、発芽するのか?生長するのか?花を咲かせるのか?を決定して植物ホルモンで指示をだしている・・・ってことです。

左がココ栽培のトマトで、右がピートベースのポッティング・ミックス栽培のトマトです。元肥がはいってるポッティング・ミックスのトマトのほうが茎が太くガッチリしてます。














植物ホルモンのなかには、化学の力で、お安くつくれる「合成ホルモン」もあって、徒長防止とか花芽をふやしたりとか、果実を肥大させたりするのに、園芸/農業の生産現場では大活躍なんですが、あまりにシャープに効きすぎるので、ちょこっとでも使いすぎたり、使い方をミスると、作物が全滅するだけじゃなくって、周囲の生態系にも悪影響を出してしまったりします。

今年の5月に話題になった「スイカ爆弾」で使用されていた「ホルクロルフェニュロン」という合成ホルモンも、「合成サイトカイニン」です。(このホルモン剤が、100%スイカ爆発の原因かどうかは、まだアヤフヤです。) また、過去には「100%天然成分」とうたって販売されていた開花活力剤や病害虫忌避剤に、発がん性がある合成ホルモン薬剤が使われてしまっていた例もあって、メーカーの良識がおおいに問われる事例もありました。(事実が分かった時点で、発売は中止となっていますので、現在は売られていません。)

元肥がはいってると、毎回肥料をあげなくても元気でぶっとく育つ反面、培養液で養分比率のコントロールができにくいので、プラントの葉色を見ながら、肥料をあげなくてはなりません。
茎が太すぎたり、葉色の緑色が濃すぎる時は、チッ素が多すぎてるシグナルなので、虫がついたり花がすくなくなったり葉っぱがふえすぎたり、丈がムダに伸びすぎてしまいます。



そんな時は、2〜3回ほどベース肥料はやめて、活力剤だけの培養液を水やりするとベターです。

肥料成分が含まれてないココ栽培は、培養液で肥料比率のコントロールができるので、ロックウール栽培のようにシャープな生長段階のシフトチェンジができます。
しかし、毎回ベース肥料でつくった培養液をあげねばならないので、ポッティング・ミックス栽培よりもベース肥料の消費量は多くなります。






ココ培地もポッティング・ミックス培土も、根酸素がいっぱい行き渡るので、元気で新鮮な根っこがよく発生するため、葉っぱの老化も遅くなります。

とはいっても、あまりに込み合って暗くなってる根元にちかい部分の老葉を葉かきしました。






葉かきは、できるかぎりはハサミよりも、キレイに洗った手でやったほうがよいそうです。人の肌の表面にはバイキンから守ってくれるアリガターイ常在菌がいるので、植物にも安全ってことのようです。


葉かきしたあとのトマトたちです。スッキリしました!!!














しかし、なんども申しますが、「葉っぱは、収穫物の生産工場」なので、葉かきしすぎはNGだし、ありがちな失敗は、葉っぱをとってくうちに楽しくなっちゃって、ついつい夢中で取りつづけてしまい、気がつけば葉っぱが減りすぎてた!!!ってことも、多々多々多々あります。

適度な葉かきをすると、翌日には花がよく咲いたり、果実が急に大きくなったり新芽が出たりしますので、葉かき作業には、翌日のプラントのコンディション・チェックも大切かと思います。