2012年10月19日金曜日

室内栽培〜生長期の管理その2〜

 昨日につづき、室内栽培での生長期の様子の紹介です。


・・・のまえに、昨日の植えかえ(植え増し)での補足です。

大きなポットで同じ培地に植えかえる場合、根元を崩さないようにして植え込むので、根がダメージを受けることはないため、光を弱くしたりというケアは基本的には必要ありません。しかし万が一、植えかえの時に、根っこがひどくチギレてしまったり、今までのポットの底から根っこがたくさんハミダしすぎててカットせざるを得ないような場合は、植えかえた後に苗がクタッ・・・となってしまうかもしれません。そんなときは、もちろん光を弱くして湿度を高めにしてあげて、根っこの回復を助けてあげる必要があります。


そして、もしも植えかえてから半日以上様子を見られない場合も、ねんのため光を弱くしたりランプを遠ざけておいたほうが無難です。



植物の栽培になじんでないおヒトは「根っこって、そんなに大事なの?」と、感じるかもしれません。「根っこ」をニンゲンに例えると、「根は、腸と皮膚」です。活発な皮膚や腸は生きるために必要な水分や養分、酸素を吸収たり病害菌に対してバリアを張って身体をゲンキに保ってくれますが、皮膚や腸の細胞が老化して死んじゃえば「垢/アカ」となって、はがれ落ちていきます。

なので、黒く枯死した根っこは「アカ」なので、ちぎってもプラントにダメージはないし、むしろ新しい細胞が活性化しますが、生きてる「皮膚や腸」をキズつければ、栄養も吸えなくなるし病原菌も入り込みやすくなるし、イロイロとつらいよね、ってことです。



ちなみに、TERRA培土への植え増し時の水やりには、ベース肥料はいりません、根っこの活力剤の希釈培養液でOKです。

しかしCOCO培地には、肥料が入ってないのでベース肥料と根っこの活力剤を希釈した培養液を水やりします。(CANNA COCOベース肥料A/Bならば、水1Lに対してA/B各2mlづつのレシピでOKです。)
ちなみに、これはすべてのココヤシ培地には当てはまりません。じゅうぶんに洗い流してない(チープな?)ココヤシ培地だと、根っこが焼けてしまうことがあります。





・・・さて、いまは、蛍光灯タイプのグロウランプでトマトとイチゴたちを育てています。室温が24℃を下回るようになってきた最近では、安心してランプを苗のトップに近づけられます。














ここまで近づけると苗のトップ部分で、だいたい20,000ルクスほどの光量がありますが・・・















蛍光灯にしても、MHランプにしても、HPSランプにしても、ランプってのは苗に近づければ近づけるほど、どうしても照射範囲が狭くなってしまうので背の高いプラントのトップにしか満足な光があたらなくなります。

このように、ランプの真下にあるトマトだけスクスクと伸びるようになってきました。光があたる様子を遠目で見ると、はじっこのトマトたちには弱い光しかあたってないことがよくわかります。苗の生長の様子から見て、そろそろ本格的にHPSのグロウランプへチェンジする時期だと思います。















ち・な・み・に・・・

植物は、葉の部分的にしか強い光があたらない「スポット照射」が、大の苦手です。たとえ光量がすこし弱くなっても、プラント全体に平均的な光があたるフラット照射を好みます。

例えば、MHやHPSランプを植物の栽培に使う場合、ランプをタテに照らすスポット照射の方が部分的には光が強いのですが、とても狭い範囲に強い光に集中してしまうので、植物の葉が「光ストレス」を起こしてしまい、強すぎる光のせいで活性酸素が発生して葉緑素の劣化がはやまり、光合成の効率が悪くなるからです。



なのでタテに照らす場合、このようなスポット照射を防ぐために、苗からMH/HPSランプの位置を遠く離すことになりますが、そうなると光が弱くなるのでランプの数をふやさねばならない羽目になります。となると、ランプの数が増えた分、空調コストも温度もグングン上昇するはめになり・・・屋根がとっても高い植物園や、設備コストがかけられる施設栽培、ショールーム的な場所むけのランプ設置方法だと思います。





ということで、欧米では植物栽培としてのMHやHPSランプが、タテではなくヨコに照らす水平照射がスタンダードになってるのは、経験的にそっちのほうがトータルで見て収穫率や効率がいいと理解してるからです。なにしろ、植物の生長ってのは、光の強さ、波長やワット数だけで決まるような単純なものではなく、肥料、温度、湿度、酸素に炭酸ガス、そして水etc・・・という環境要因が、光と同じく重要です。なによりも、植物は生き物なので、栽培設備だけで満足せず、植物が何を言いたいのか察してあげる想像力・・・は大切だと思ってます。










ハイドロ・システムのトマトの葉に「水泡症」がでてきました。TERRA培土とCOCO培地の同品種のトマトたちには、でてません。「水泡症」は病害虫の被害ではなく、光が弱いときにトマトの葉にでる生理障害だそうです。やっぱりHPSランプヘチェンジする時がきているようです。















「水泡症」の葉っぱをちぎって、置いておいたら、水泡がすべて消え去りました。














・・・ということで、やっぱりいつなんどきでも、マニュアルや数値だけを重要視せず、ガーデナー自身の目で見て「これでイケそうだ! このままいこう!」「こりゃ、いかん! もしかして、これが原因か?」を判断することが鉄則かなぁと思います。


2012年10月17日水曜日

室内栽培〜生長期の管理の基本〜

さて、TERRA培土とCOCO培地のトマト苗たちをドドッと植え変えしました。ワタシがした「植えかえ」作業は、厳密に言えば「植え増し」作業です。

「植え増し」とは、いままでよりも大きなポットへ植え込むことで、基本的には培土や培地は同じものを使います。なので大きなポットに植え増しすることを「鉢増し」とも言います。トマトや野菜などの一年草の場合、植えかえのとき根っこを切るのはマイナスの効果しかないので、「植え増し」の意味を説明してみることにしました。

(プロの農家さんのなかには、イチゴなどで生長期から開花期へ移行させる時に、あえて根っこをバッツリと切る方もいますが、キチンとした知識なしでトライするのは、決しておススメしません。、また、ランやバラ、果樹、そして盆栽など年単位の植物を植えかえる時は、枯死して伸びなくなった根っこをカットすることが当然必要となります。)

TERRA培土やCOCO培地などで室内栽培する場合は、同じ培土や培地へと植え増ししていくのが鉄則ですが、すでにその培地に適した根っこが発達しているので新しい培地に順応させる必要もゼロだし、一年以内で栽培が終わる植物ならば、生長期に根っこをカットしてしまうのは、肥料やけの原因になったり、生長が遅くなったりして、その遅れた分だけ電気代も肥料代も手間もどんどんかかり、かといって、その分収穫量が増えるわけではないので、結果的にマイナスでしかないと言えます。


・・・ということで室内養液栽培の「植え増し」作業は、根っこをトリミングしないので、植えかえた後に光を弱くするなど、神経質なケアは必要ないと言えます。ただ、根っこの伸びを助けてあげるために、根の有機活力剤を葉面スプレーしてあげることはGOODです。6LポットのTERRA培土に植え増ししてから数日経ったトマトたちです。植えかえた翌日から、メキメキとでかくなりました。














生長期にベストと言われている温度は20°〜25℃、

基本的に室温が低くなればなるほど、ベストな湿度は低くなるのですが、20℃〜25℃の室温なら、ベストな湿度は60%〜70%ほどです。











そして、COCO培地のトマトたちも、昨日3Lポットへ植えかえました。COCO培地は、とてもスペシャルなココヤシ培地なので、きちんと塩類を洗い流してあって、さらに専用のバッファリング剤で保肥性を持たせてあります。
なのでCOCO栽培では、毎回の水やりはベース肥料を希釈した培養液でなければなりません。








COCO培地をはじめ、ココヤシ培地はロックウール栽培とほぼ同じ栽培管理でOKですが、同じ培養液の循環栽培はできません。また、市販のすべてのココヤシ培地がCOCO培地と同じグレードとは限らないので、COCOでの根はりや生長の良さが、すべてのココヤシ培地に共通してるわけではないです。COCO培地は塩分とムダなイオウとカリウムを洗い流し、そのかわりカルシウムその他の塩基性肥料で保肥性を補ってあります。


ちなみにCOCO栽培は、手で持ってみて軽く感じる前に培養液をヒンパンにあげたり、焦って肥料濃度を濃くしてはなりません。苗が小さなうちに培養液のEC値を濃くしてしまうと根の老化が早くなって、結果的に花を咲かせ続ける持続力が乏しいプラントになってしまうそうです。なので生長期前半のベース肥料のEC値は1.0mS/cm前後にキープしてみます。肥料濃度の管理には諸説あるかと思いますが、今回は花がつくまで肥料濃度EC値を低めに管理してみて、根っこがたくさん張って花が咲いてきてから、徐々に・・・思いっきりEC値を高くしてみようと思ってます。


ハイドロ・システムのトマトたちも同じで、培養液のEC値を0.7mS/cm、水温23℃にしています。















かなり遅れてスタートさせたハイドロ・システムのトマトたちですが、やっぱり生長が早いです。苗の生長の早さは、根っこの生長の早さに比例します。電磁弁付きレギュレーターとタイマーで、1時間毎に10分ほどCO2を吹き込んでpH値を5.5〜6.5の間に調整するようにしてから、さらに根っこの生長が早くなりました。


培養液の適正pH値範囲は5.5〜6.5ほどですが、各肥料要素の溶け具合はpH値で変わるので、このゼンブのpH値を一巡させる必要があります。つまり、新しくつくった培養液のpH値を5.5ほどに調整したら、pH値が6.5以上になるまではpH値を下げない方がいい! ということです。

さて、今回の自作Sodaponicsシステムは、ヤッツケ気味でつくったので、サラッとふれます・・・

ガーデニング用の電磁弁つきCO2レギューレーターでこさえた自作カーボネーターを5Kgミドボンにくっつけて、耐圧ホースの先に「ベンチュリ」取り付け、パイプを巡っている培養液に直接CO2ガスを吹き込んでいます。
「ベンチュリ」については、また今度!








ミドボンと自作カーボネーターで、培養液にCO2を吹き込むSodaponicsのメリットですが、なんといってもCO2(=炭酸ガス)のムダが少ないのと、肥料の効きがよくなることです。

CO2は培養液に100%溶け込んでくれるわけではないので、密閉できるグロウルーム内ならば、Sodaponicsのシステムをファンの風上に置いておけば、グロウルーム全体にCO2が行き渡り、ムダがありません。また、CO2を培養液に吹き込めば、もちろん炭酸水培養液となるわけですが、炭酸水でつくる培養液のメリットは以前ご紹介したことがあります。


http://desktopfarmer.blogspot.jp/2011/11/1.html

ミドボン5Kgなら炭酸ガスのコストは、なんとたったの2,000円+消費税で数ヶ月はもちます。ミドボン本体には保証代5,000円ほどかかりまして、お店に返す時に保証代は返してもらえます。(ミドボンのコストは、苗の数や養液タンクのサイズで大分変わります。なので、大きなハイドロ・システムには不向きかもしれませんし、水温が高くなる夏場はガスが溶け込みにくくなるのでムダが大きくなると思います。)




そんなこんなで、いよいよ初挑戦のSodaonicsトマトたちなので、多少鼻息を荒くして日々見守っています。ひとまず、根っこの伸びがとってもいいので、安心してます。


2012年10月12日金曜日

「室内栽培 」〜生長期のセッティング 〜

やっとのことで、DR240の生長期用セッティングがほぼ完了しました。後々になって実がついて根が張って培地が乾く速度が早くなったら、底面給水で管理する予定です。

種子からスタートさせたトマト3種、「アイコ」「レッド・オレ」「イエロー・ミミ」は、定番のTERRA培地、COCO培地・・・
そして今年は炭酸ガスでpH値をコントロールするハイドロ・システムの3種類の栽培方法で室内秋冬トマト栽培にトライします。














まだ2号鉢でじゅうぶんな丈のTERRA栽培とCOCO栽培のトマトたちです。左側のハイドロ・システムは、自作カーボネーターでCO2をダイレクトに培養液に吹き込んでpH値を5.5〜6.5ほどにおさまるようにした、いわば本来の「Sodaponics」です。ハイドロ・システムのトマトたちは、たった一週間前から循環式システムにセットしましたが、ヤッパリ生長速度が早いです。アレヨアレヨという間に、新芽が展開してきます。
















ちなみにTERRA培地、COCO培地、ハイドロ・システムのうち、ダントツに生長がはやく大きく育ってるのがTERRA(左と後方まん中)です。COCO(右と前方まん中)のトマトたちは普通の生長です。TERRA、COCOの有機培地に共通しているのは、「節間が間延びせず、ガッチリとブッシィな理想的な苗に育ってる」ってことです。














「あかねっ娘」たちです。アブラムシが出てきてる苗もありますが、とってもゲンキです。イチゴの方もTERRA培土で育ててる方が新葉の展開が早く、茎が太くなってます。















いまのところ、トマトもイチゴもTERRA培土の苗が、もっとも生長がはやく、いい感じで育ってます。その理由はハッキリしていて、「ガーデン・ピートがベース原料のTERRA培土は植物にとって、ものすごく根っこが張りやすい!」というメリットのおかげです。COCO培地は、後半根っこがびっしり張ってからが本領発揮!となります。くわしくは、トマトたちの生長とともに、おいおい説明していきます。

現在グロウルーム内の室温は、ピーク時に25℃程度になります。湿度は60%を切らないように管理しています。今後、グロウルーム内の温度が22℃以上にならなくなったら、本格的な植物育成ランプのMHランプかHPSランプにチェンジしていこうと思っています。

今週から、ハイドロ・システムの培養液に1時間毎に10分ほどCO2を吹き込むようにして、そこからもれただようCO2がグロウルーム内全体に流れるようにファンをまわしてみました・・・そのおかげなのか、TERRA培土のトマトたちの生長がさらに早くなったので、とっとと6Lポットに植えかえることにしました。


2012年10月5日金曜日

「室内栽培」生長期への準備Secret Jardin組み立ての日

10月に入っても、まだまだ暑い日がブリ返したりします。トマトとイチゴを育てているグロウルームの室温が暑くなりすぎないようにハラハラしつつ、仕事のあいまに様子を見にいく日々です。

夏野菜のトマトは気温が下がりすぎると生長がキョクタンに遅くなります。本格的に夜の気温が下がりはじめる前にとっとと大きく育ててしまった方が、時間も経費も節約できるので、ソロソロ本格的なグロウルームをセッティングすることにしました。

今年は、ホビー用グロウルームでは大きめな「Secret Jardin DRW240II」にしてみました。

タテ2メートル、ヨコ2.4メートルあります。ここまで組み立てるのに大人2人で約10分ほど、ワクワクしながらやりました。(組み立てになれてしまえば、大人1人数分で組み立てられるそうですが・・・)










サイドの壁部分をグルッとまいて、組み立て終わりました。

かなり引いて撮影しているので、たいしてデカクもなさそうですが、大柄の男性でもラクラク横になれます。














DR240を組み立てた後、グロウランプや苗をセッティングしていきますが、組み立ててでクタクタになったうえ、室内のトレイスタンドなどはすべてDIYしていくので、そのプロセスはまた次回・・・


ちなみに、現在仕事場でトマトとイチゴの室内栽培をしていますが、オフィスでの室内栽培は、なかなか合理的でおススメです。

ほぼ毎日決まった時間にヒトがいるので、水やりなどの定期的にせねばならない管理もスムーズにできると思います。

また、蛍光灯などの照明である程度の光量はかならず確保できるかと思いますし、事業所では単相200Vが引き込まれている場合がほとんどかと思います。

高圧ナトリウム灯など本格的なグロウランプを点灯させても単相200Vのほうが電気効率がいいので、ランプ機器も故障が少なく長持ちしますし、100Vよりも使用電力のロスがへるので結果的に電気代も安くなります。ちなみに最近はご家庭でも、単相200Vが引かれている家屋が多くなってますが、電化製品と電源コードが200Vに対応していないと使用できません。


なによりも、仕事のあいまに生長している植物たちをみていると、ちょっとした息抜きもできるし、大きく育てばモチロンお昼ゴハンにみんなで食べることもできます。(虫がでることもあるので、苦手なヒトには苦痛かもしれませんが。)

とくにこれから冬場の閉め切った空間では、人々の息でCO2濃度は1500ppmほどにもなってしまうので、オフィスの片隅でレタスやハーブなどカンタンな野菜を育てれば、それはそはれよく育つのではないでしょうか?

オフィスでの室内栽培の問題点は、まず夏や冬、ゴールデンウィークなどヒ長期休暇なので、私達の場合は、水切れしやすい夏には夏期休暇にはいるまえに栽培を終わらせています。冬の年末年始休暇は、休み前に水をたっぷりとあげておけば、水切れで枯れるということはほとんどありません。ゴールデンウィークは、地域やその年の気温にかなり左右されますが、休み前に水やりをたっぷりやって光をやや弱めにしておけば、植物たちは、毎年ほぼ間違いなく無事にゲンキにそだっています。




2012年10月3日水曜日

室内栽培 〜 幼苗期の管理の基本 2 〜

秋の室内育苗シーズンは、温度/湿度メーターから目が離せません。


歩くだけで汗ばむような日には、グロウルーム内の温度が、ギュ〜ンと30℃ちかくにもなってしまいます。急いでファンをフル回転にすれば湿気がみるみる下がって空気が乾燥してしまいます。

蛍光灯タイプのグロウランプでも、夏のような暑さの日には、あっというまに29℃になってしまいます。
もし、これがメタルハライドランプなんかだったら、グロウルーム内は、息ができない灼熱地獄と化します。

幼苗期や挿し木の発根するまでの期間は、その植物にベストとされる光量よりも、室温と湿度が適度な範囲におさまるようにランプの位置を決めたほうが、カシコイといえます。






夏のような日には、すかさずグロウランプの位置を高めにして、ランプから苗たちへの距離を離してあげたほうがいいし、温度が22℃ほどにさがった日は、ランプの位置も下げた方がいいです。










室内の温度が29℃にもなってしまったこの日は、ランプの位置を高くしました。この後、グロウルーム内の温度は26℃、湿度は69%ほどになりました。めでたしめでたし。














ほとんどの植物にとって、一番生長しやすい日本の気候は春と秋です。つまり真夏や真冬のような極端な気温にならないように温度管理すればOKということになります。

そして最適な湿度は、生長段階で変わります。

【発芽/挿し木/幼苗期】湿度 : 70%〜85%(90%以上はNG!)

【生長期】湿度 : 60%〜70%(40%以下と85%以上はNG!)

【開花〜収穫期】湿度 : 40%〜60%(40%以下はNG!)


※気をつけたいことは、湿度のある空気と、ムレた空気はちがうということです。空気に動きのない空間は、いくら湿度が最適範囲だとしても苗もまた息苦しくなります。( 植物にはCO2だけでなく、酸素も必要です。)
温度計や湿度計を見るまでもなく、ガーデナーがグロウルームのなかの空気を「さわやかで快適!」と感じられないのなら、それは植物も同じなので、新鮮な空気を取りこむ工夫をしたほうがよいといえます。

(ただしCO2ガスを添加しているのなら、かならずCO2濃度をチェックしながら植物の世話をしてあげないと・・・いつのまにか気を失って天国に行ってしまいます! ジョークではなく、欧米ではその事例が少なからずあります。)



ワタシのお気に入り加湿器のひとつ「ミスティー・ガーデン」です。不織布にしみ込んだ水分が少しずつ蒸発して加湿してくれるので、電気もいりません。
自作炭酸水をしみ込ませたミスティー・ガーデンにファンをあてて、グロウルームへ風を送り込むとCO2と湿度が添加できます。ミスティー・ガーデンの不織布には定期的に黒カビがはえるので、ハイターでガンガンに漂白して、しっかり乾かして塩素を蒸発させてから、繰り返し使っています。







同じグロウスペースで、背丈や生長段階がちがう苗を育てる場合のベタな工夫です。
背丈の小さな苗にも満足な光が行きとどくように、そのへんの資材を駆使して底上げしてあげました。こんなふうに高さを揃えてあげれば、光も風も全体にムラなく行き渡ります。














最後に、苗の「植えかえ、植え増し」していくときのポイントですが、植物の根っこは培地や土壌の性質に合わせて、伸ばす根の性質を変えます。これは植物が生存競争に勝っていくための知恵ですが、例えば窒素が足りない土なら窒素をたくさん吸える根、リン酸が足りないならリン酸がたくさん吸える根、乾いた土なら根を長く長く伸ばす etc・・・

なので、根がいっぱいに張ったあとに、たとえば水耕だったのを土耕に・・・などの極端に栽培方法や栽培培地をガラッと変えてしまうのはNGです。( COCO培地で発芽や挿し木の発根をさせて、本葉が出たら幼苗のうちにTERRA培地へ植え込むのはOKです。)


例えば、根っこがいっぱい生えた生長期に、COCO培地からとつぜんハイドロ・システムに植えかえてしまう、なんてことをすると、いままで酸素が豊富だったCOCO培地から、酸素少なめ+水分多めのハイドロ・システムに突然かわってしまうので、根っこがその環境に適応するまでロスが出ます。



これはあくまでも、ガーデニングビギナーから中級者向けのノウハウなので、経験豊富なガーデナーさんで独自のノウハウがあるならば、もちろん当てはまりません。実際、トマトや稲、果物で付加価値の高い農作物を育てられるカリスマ農家さんのノウハウは、一人一人まったく違ったりします。味を濃くするために水分は極力やらないほうがいい、というヒトもいれば、水分も養分も切らさずにやさしくおだやかに育てた方がオイシいのがたくさん穫れる、というヒトもいます。収穫物のクオリティーをあげるために、砂糖がいい!というヒトもいれば、いやゼッタイ塩だ! というヒトもいます。

結局、「 どの栽培方法がイチバン正解! 」というのはないと思うのですが、ヒトとちがった栽培方法でみごと成功している農家さんの共通点は、植物の生長の仕組みと気持ちが理解できていることかな? と思いました。

いずれにしても、栽培スキルの上達は、基礎 + 基礎 + 基礎 ! の積み重ねしかありません。それしかないんです! と最近フタバをイジケさせたワタシ自身に言い聞かせる今日この頃です。


2012年9月28日金曜日

室内栽培 〜 幼苗期の管理の基本 〜

「貧民を堆肥にしては、どうだろうか・・・」
このアホのような提案は、農産物の収穫量を真剣にふやしたいと試行錯誤していた19世紀イギリスのガーデナーたちによって、真剣に検討されていたそうです。

「生きてる人間を? 肥料にする? ちょっとアタマが気の毒なヒトのなかねぇ・・・」と、思わず笑ってしまいますが、1800年代中ごろにリービッヒが「肥料」という概念を生み出し、中米でバットグアノが見つかるまでは、動物はもちろんヒトの死体がおもな堆肥にされていたそうなのです。

・・・さて、作物が人命よりも貴重だった19世紀とはうってかわって、現在は、必須肥料成分がすべて入った便利な複合肥料がたくさん手に入ります。

 あとは、それをどう使いこなすか??? という課題が大きくなると思うのですが、まずはステップ1の「発芽からの幼苗期」のベーシックな管理方法です。「挿し木からの苗」とは、肥料濃度管理がちょこっとちがうので「発芽スタート」か「挿し木スタート」かで管理方法に注意が必要です。

「幼苗期」とは、たとえばトマトならタネが発芽してフタバが展開し、そのど真ん中から本葉がひょっこり顔をだして広がってから、本葉が2〜3組くらいになるまでの間です。

 まず、悩むのが「光の強さ」ですよね。
発芽からの幼苗期はカヨワイので、窓辺越しの太陽のあかりか、蛍光灯の明るさくらいがベストかと思います。(個体差あり!)

←蛍光灯タイプのグロウランプで、約15,000ルクス〜20,000ルクスくらいで管理しています。たとえば窓辺などに置いておいて、苗のアタマがグイ〜ッと光の方に向いてしまうようなら、光をもう少し強くしてもいいかな? という感じです。

試しに光を強くしてみた場合、1〜2時間後に必ず苗の様子をチェックしてみて、もしもダラ〜ンと萎れてしまってるならば、すぐ日陰に避難させます。翌日くらいに、苗がシャキッと立ち直ったら、弱い光にもどした環境で管理します。









次にとっても重要なのは、「気温と湿度」です。いまの季節だと、昼間の気温は24℃前後でベストだと思いますが、問題は「湿度、湿り気!!!」です。晴れて風が強い日と、曇っている日では、いくら室内といえども「湿度」は10%も軽く差があります。

「発芽」または「挿し木」どちらの「幼苗期」でも共通してますが、湿度は最低50%はあったほうがいいです。理想は60%〜80%ほどと、高めが理想です。
「幼苗期」以外でも、たとえば培養液を濃いめにしたいときや「光量」を強くしたときは、かならず「湿度」を70%前後ほど確保した方が無難です。




しかし、ゼッタイにしてはいけないのが、かんかん照りの光の下での「葉面スプレー」です。

24時間以上葉っぱがぬれたまま直射日光の光に当たると、光合成する酵素が働かなくなってしまうんだそうなので、「葉面スプレー」は、曇りやランプが消える1時間ほど前など、かならず弱光下でせねばなりません・・・
葉っぱを濡らさないようにして、グロウルームの湿度を上げたい場合は、濡れたタオルを横っちょにおくとか、水がはいったペットボトルを横っちょに置くとか、水を横っちょの床面にスプレーするとか、サマザマザマな工夫があるかと思います。












そして次にアタマを悩ますのが、本葉がでてからの「培養液管理」かと思いますが、これは「発芽培地」によって、すこ〜しづつちがいますが、基本は同じです。

まずは、春夏秋冬のいついかなるときでも、与える水の水温を18℃〜24℃程度にし、培地の表面がやや乾いてきたころに水やりをします。(培地がひたすらヒタヒタと湿っているのはNGですし、カラッカラに乾かしすぎもNGです。)

水やりの水には、「根っこの活力剤をうすめた培養液」が間違いないのですが、ロックウール培地やココ培地など「肥料成分がほぼ含まれていない発芽培地」は、本葉がでたら「基本濃度の2倍〜4倍ほどの薄めのベース肥料培養液(EC値0.5〜0.8mS/cm、導電率200〜400ppmからスタート) 」をあげはじめます。ベース肥料の希釈濃度は、植物の強さによって、ずいぶんと開きがありますが、薄ければ薄いほど失敗が少なく無難です。

いちかばちか、EC値が濃いめの培養液をあげる場合は、ゼンブの苗に同じ培養液をあげずにどれかヒトツだけに実験的にあげてみるといいです。翌日チェックしてみて、もしもゲンキに新芽が展開してきてるなら、全ての苗に同じ濃度の培養液をあげればいいし、もしも苗がクタッと萎れてしまったとか、葉っぱのフチがちょっと白く焼けてちぢれてしまった、などの肥料焼けの症状がでてしまったら、水か根の活力剤の培養液で培地を洗い流しつつ、弱光下に置いて様子を見ます。



次に「CANNA TERRA ポッティング・ミックス培土」の場合です。TERRA培土には少しの肥料が入っているせいで、EC値がもともと1.2mS/cmほどあるため、発芽や挿し木用の培地としては、あまり向かないのですが、幼苗期にはココやロックウールよりも勝手に元気に育ってくれる、というメリットがあります。

ココ培地で発芽させた後、根が伸びてから植えかえたトマト苗「イエロー・ミミ」の「左 : ココ培地」と「右 : TERRA培土」の生長のチガイです。















クローンの挿し木苗とちがって、種子からスタートさせた苗は、もちろん生長度合いに個体差がでますが、全体的に「TERRA培土」のほうが生長がはやいようです。
↓この苗は「アイコ」です。やはりTERRAの方が本葉展開が早いです。











左 : TERRA培土の「レッド・オレ」
右 :ココ培地の「レッド・オレ」

これらはいずれも、「ココ培地+セルトレー」で発芽させた後に、セルトレーの底穴から根っこがはみ出してきたタイミングで、2号鉢のココとTERRA培土へ植えかえました。









元肥がはいってる「CANNA TERRAポッティング・ミックス培土」には、培土が乾いて軽くなった時に、根っこの活力剤の培養液のみを与えていて、まだ一度もベース肥料の培養液をあげていませんが、これだけ生長に差が出てしまいました・・・

これは、ココ培地にはもう少し濃い培養液をあげても大丈夫だよ、ということなのかもしれません。


TERRA培土はこの後、生長期の間だけは肥料は水やり3回に1回だけにします。残りの2回の水やりは、活力剤のみを培養液にします。個体差はありますが花が咲くころになると培土のなかの元肥が切れてくるので、ほぼ毎回ベース肥料の培養液をあげるようにします。

COCO培地は、生長〜開花をとおして毎回しっかりとスケジュールどおりのベース肥料培養液をあげます。培養液の管理をきちっとしていると、結果的にCOCO培地のほうが収穫量も味もよくなりますが、TERRA培土よりも手間がかかります。




ちなみに「挿し木からスタートさせた苗」は、根が出た挿し木苗には、ほぼ「幼苗の期間」というものが存在しません。挿し木の場合は、発根した苗をココ培地なりTERRA培土なりに定植してから新芽がでてくるまでの間だけ、通常値の2倍にうすめたベース肥料培養液をあげますが、新芽がでてからは通常の濃さの培養液にしないと徒長しやすくなったり開花が遅くなったりします。また、挿し木苗はすでに花を咲かせるホルモンをもってるので、例えばトマトの挿し木苗であれば、15cmほどの高さになったら、とっとと開花のスケジュール環境にしてしまいます。こうすれば果実の収穫までの期間を大幅に節約できるのに、収量はさほど減りません。



・・・ということで、同じ幼苗期でもココ培地やロックウール培地などのハイドロ栽培と、TERRAポッティング・ミックス培土などの養液土耕では、培養液のあげ方がすこしちがいますが、生長のわずかな差にはそこまで神経質にならず、スクスク育っているようなら、それでヨシとする割り切りも必要です。


もっとも気にせねばならないことは、ほとんどの植物は、強い光、強い肥料、強い乾燥、凍える冷たさ、うだる暑さ、水のやりすぎ、水のやらなさ過ぎ・・・のどれかか一因があると、うまく育たなくなる、ということです。

葉っぱがちぢれた、新芽がいじけた、苗が萎れた、など生長にトラブルが見られたら、いついかなるときでも、光を弱くし、培地の肥料を洗い流し、湿度を60%ほどに維持して、様子を見てあげるのが基本かなと思います。


もしも、なにかに迷ったら、いついかなるときでも一番大切な基本は、マニュアルやスケジュールに振り回されず、生長の様子を自分の目で見て、まず上のような症状がでていないかを観察して、光の強さ、肥料の濃さ、水やりのタイミングなどを決めていくことだと思います。栽培のマニュアルやスケジュール表は、あくまですべての条件が理想環境であるという前提での数値だからです・・・



2012年9月24日月曜日

2012年秋冬の室内栽培、はじめました。

ツバメたちは、すっかり南の国に旅立ってしまいました。空を見上げても、もうその姿はどこにも見えません。だというのに、「 ホントにいつまで続くんだろう?この暑さは!!! 」と気が遠くなるような今年の暑さでした。

が、秋分の日をさかいに、やっとのことで秋らしい涼しさがやってきました。

昨日の寒々しい雨のおかげで、通気性バツグン構造のポットからは、キノコが登場してました。

ホントに暑かった今年の夏ですが、去年の冬に芽生えたウバタマ多肉は、目に見えてスクスクとサイズアップしました。

いまさらですが、多肉ってのは光や肥料よりも、35℃くらいの温度がイチバンの生長促進条件なんですね〜。







ちなみに、
←は、今年のはじめのころの同一人物です。

水をやっただけで、しょっちゅう土から引っこ抜けていた、なんとも頼りない頃のウバです。












さて、夜間の温度も25℃を下回ってくるようになったので、いよいよ今年の秋冬イチゴたちとトマトたちの室内補光栽培をスタートさせました。
イチゴもまだ花を咲かせてないし、トマトはほぼフタバ段階だし、なにより昼間の室内温度はまだ余裕で28℃以上になってくれるので、まだまだ蛍光灯グロウランプで2万ルクス程度の光量で十分かとおもってます。














「 強い光がたくさん当たれば当たるほど、光合成をイッパイして、早く大きくなって、たくさん花を咲かせて、たくさんおいしい果実が穫れる・・・」

というわけにはいかないのが「光合成運動」の複雑怪奇な部分かと思います。植物それぞれ最適な光量や温度、湿度etcありますが、ほとんどの植物は、気温がだいたい30℃以上になってくると、光が強すぎると逆にストレスになってくるんだそうです。

それは光合成してデンプンを作るにもエネルギーを消耗するし、酸素呼吸するのにもエネルギーを消耗するし、光合成に必要な酵素も温度が高すぎると夏バテして働かなくなっちゃうし、温度があがって湿度が低くなるとやっぱり光合成をストップしてお昼寝をはじめちゃうし・・・などなど一口では言い切れないさまざまざまな要因で、夏場の強光はNGダッタリします。(最低限の日当りは、もちろんゼッタイに必要です。)

ワタシ的には、分かったようで、まるで理解できてない「光合成とは?」くわしく知りたい方は、こちらの本がおすすめです。( 答えがますます遠くなるかもしれませんが、正解を知ることができます。)
http://www.amazon.co.jp/光合成とはなにか―生命システムを支える力-ブルーバックス-園池-公毅/dp/4062576120
















ちなみに、ココ培地に植えかえた「あかねっ娘」です。
イチゴについては、もう新しい品種を育てることはやめました。そのほうが、昨年の失敗をふまえて育てることができるかなと思ったからです。

なんにせよイチゴ栽培、奥が深過ぎです・・・

ココ培地の表面がだいぶ乾いてきました。手でもちあげると軽くなってます。でもまだ水やりはガマンします!







乾いたココ培地を軽く指でほじってみると、表土から1cmほど下は、まだ湿っています。このイチゴは、まだ植えかえたばかりで、ポットいっぱいには根っこはまだ張っていません、おそらくポットの底の方はまだタッッップリと湿っています。
ポットの底まで根っこが届いてない時期は、いくら培土の表土が乾いても、1〜2日ほど水やりをしないでおきます。そうすれば根っこが水を求めてポットの底の方まで伸びていきます。(植えかえた後の、はじめての水やりは葉っぱがすこ〜しだけクタッとしおれた時がベストなタイミングかと思います。)















しかし、これから大きく育って花が咲いて実がつく頃には、根っこはもうポット全体に張っていきます。この時は、表土が乾いてポットが軽くなったら、ドンドン水やり(培養液)してOKなのですが、低温障害や肥料やけなどを起こして、根っこのゲンキがなくなったときは、新しい根っこをのばしてあげねばならないので、培土を乾かし気味にしてあげる必要があります。
プラントに、ちっちゃい虫やカビ病などが出てしまったときも、ココ培地やポッティング・ミックス培土を乾かし気味にして、根っこの勢いを取り戻してあげるとGoodかと思います。



さて、今年のトマトたちです・・・