でもF1品種だって固定種化は、できるんです。
そもそも、いま固定種として残っている日本独特の品種も、始まりはF1品種だったはずです。おなじF1品種どうしをF2、F3、F4・・・とくり返し交配させて、その都度にF1品種の特徴をもった株どうしだけを交配させていくと、F1品種のよさが安定していって、F7くらいで晴れて固定化となります。
ただ、F2、F3、F4・・・のたびに大量にタネをまくことになるそうで、とっても時間がかかります。
ベーシックなF1品種のつくりかたですが、ホップやパパイヤ、キウイなど雄カブと雌カブがべつべつの雌雄異種ならカンタンです。雌カブに、交配させたい別品種の雄カブとを受粉させればOKです。
でも植物の花の多くは、雄しべと雌しべが一緒になっているので、ほっとくと勝手に受粉して永遠にF1品種は生まれません。
そこで雄しべが役に立たない「雄性不稔」、つまりオカマな突然変異がでてくるのをひたすら待ちわびるか、無理矢理つぼみから雄しべだけをコツコツ抜き取ったりと地道すぎる作業が必要でした。
ところが最先端の「遺伝子組換作物=GMO」のつくりかたは、やり方がすこしばかり乱暴です。
ひとつは植物の細胞核内のDNAに放射線をあてて,人為的にDNAに異変をおこさるやり方。
もうひとつは植物の細胞にガンを起こさせる病原菌の遺伝子をくみかえてから植物に感染させ、ヒトサマが意図したような突然変異を起こさせるというものです。
そこに植物の意思なんてものはなく、なんとも心がざわざわとしてしまいます・・・
F1品種にハナシはもどりますが野口種苗さんのおハナシによれば、企業が肥料食いのF1品種ばかりをデザインした意図は肥料と農薬をいっぱい買ってもらうためだったそうです。
第二次世界大戦がおわったら、たくさんの国が食料不足になって
「タネを制するものが世界を制する」モードになりました。
「タネを制するものが世界を制する」モードになりました。
化学兵器のニーズがめっきり減ったところで、化学兵器をつくっていた大企業は、肥料やら農薬やら除草剤やらF1品種やらの開発をはじめました。こうして食糧自給率130%の米国の農業は、合理性と利益性ばかりを優先した化合物まみれの巨大化した農場、ファクトリー・ファーム化ばかりが進んできました。
日本にF1品種の野菜や穀物がなだれ込んできたのは、食糧不足の絶頂だった戦後だそうです。アメリカは、戦争が終わっていらなくなった爆弾を肥料にして日本に買ってもらうために、肥料食いと農薬好きなF1品種の作物のタネとともに日本に売り込みました。
(ある肥料成分は爆発性が強いので、いまでも厳しく管理されています。)
そして今、スーパーに並ぶ野菜はぜんぶといっていいほどF1品種です。
ところが近ごろはオーガニックブームが盛り上がって、人気のある野菜は減農薬と減肥料の安心そだちへと変わりつつあるみたいです。
新しい品種のトマトのタネには「耐病性にすぐれ肥料もあまりいらない。とっても甘くておいしいトマトが盛夏でもよく実り、スズナリに」という能書きを目にすることが多くなってきました。
でもでも「これは昔ながらのやり方で交配させたF1品種なのかな? もしかして遺伝子組換作物(GMO)じゃないのかな?」なんていう不安が頭をよぎります。
それにしても、タネの権利を独占的に独り占め&販売することに、そんなに大きな価値があるんでしょうか? 世界的な大富豪さまは、ノルウェーに世界中の種子の銀行をおつくりになるくらいなので、きっとキレイゴトではない側面もあるのかもしれません。
そこで「野口種苗」さんは、ひとりよがりな商業主義がまきおこしそうな地球規模での生態系の破壊を防ぐために,現在も「固定種/在来種」の保存と大切さを訴えつづける活動をなさって多忙を極めていらっしゃるというわけです。
多少ムシに喰われたって不格好だって、ホビーガーデンならオイシくて安全なのがいちばんです。おウチで育てるなら,ゼシ固定種を!! っていうことなんですね。
以上、「ガーデンショーに行ってきました」というおハナシでした。